Column – 27
パワハラ防止研修お役立ちマニュアル
~全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ防止対策~
パワハラ(パワーハラスメント)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワハラ(パワーハラスメント)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。さて、前回は、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラの具体例」ついて一緒に学びました。今回は、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ防止対策」について見てまいりましょう。
【目次】
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
- 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
- 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶパワハラ(パワーハラスメント)防止対策
- パワハラ(パワーハラスメント)防止のための職場と仕事の位置づけ
- パワハラ(パワーハラスメント)防止対策「感情」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす潜在意識「~すべき」
- まとめ
1. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
職場で、パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として講じられているのが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修です。2022年4月までに日本全国にある全ての事業主対してパワハラを防止するための対策を講じることが義務付けられましたので、今までパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施していなかった組織でも、初めてパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施しています。
ただし、以前のコラムでも書きましたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の実施は「義務」ではありません。あくまでも、パワハラ(パワーハラスメント)の防止対策の1つとして、取組むことが望ましいとされています。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修以外では、「ポスターの掲示」、「社内システムでの啓蒙」、「パワハラに関する冊子の配布」、「パワハラに関する勉強会」等、さまざまな取組があります。このような対策を講ずれば必ずパワハラ(パワーハラスメント)が防げるか、というと必ずしもそうではないのですが、働く人がパワハラ(パワーハラスメント)に関する意識を高めるためには重要な取組となります。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として「ポスターの掲示」や「パワハラに関する冊子の配布」は、1回の対応で完了し、後は働く人たちにポスターや冊子を見るか、見ないか、を委ねることができますが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する場合は準備することが多くなります。
特に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で何を受講者へ伝えることがパワハラ(パワーハラスメント)を防止する上で重要か、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する際の担当者の頭を悩ませます。また、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を受講する階層によっても学ぶことが異なることから、各階層に向けた望ましいプログラムについて慎重に検討することが必要になります。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」から見てまいりましょう。
2. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を誰が受けるか、について決めることです。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、大きく分けて次のようなグループの中で選定することができます。
- 労働者全員(全ての雇用関係含)
- 新入社員
- 一般職
- 管理職
- 役員
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、これらのグループに分けることができますが、労働者全員と各階層に分かれて実施するのはどちらがよいのでしょうか。
まず、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して実施することのメリットとデメリットをみてみましょう。
3. パワハラ防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットは以下の通りです。
- 全ての労働者に同じ情報を伝えることができる。
- 選定する必要がないので楽である。
- 準備する資料が1種類なので手間が省ける。
- 労働者間での意識が統一される。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するデメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることが難しい場合がある。
- 階層ごとに異なる課題への解決が難しい。
- 立場の弱い人たちが委縮してしまう。
- 話し合いがしずらい。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットとデメリットについてみてきましたが、全員で受講することを選択した場合は、受講者にとってのデメリットの方が多くなります。
一方、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員で受講する選択をした場合は、主催者側にとってのメリットが多くなることから、受講者にとっての学びを深めるためにはあまり望ましい選択ではありません。
では次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層に分けて実施する場合のメリット・デメリットについてみていきましょう。
4. パワハラ防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることができる。
- 階層ごとの課題を解決することができる。
- 階層に適した内容を構築することができる。
- 話し合いがしやすい。
- 同じ立場の人の意見を聴くことができる。
- チームワーク力が強まる。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、受講する人の学びを深めるメリットが多いことが分かります。
では、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するデメリットについても見てみましょう。デメリットは以下の通りです。
- 各階層ごとに研修資料を準備する必要がある。
- 階層ごとの日程や会場の設定をする必要がある。
- 他の立場の人の意見を聴くことができない。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、主催者側へのデメリットはあるものの、受講者側がパワハラ(パワーハラスメント)について学ぶ上でのデメリットは多くはありません。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合と階層ごとに実施する場合のメリット・デメリットについて学んできましたが、それぞれのケースでメリット・デメリットがあることが分かりました。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合のプログラムについて学んでいきましょう。
5. 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
■ 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を全従業員向けに実施する場合は、先述したようにメリット・デメリットがあります。職場で働く人全てが同じ情報を共有できることは望ましい一方、立場により学ぶ課題が異なることから全従業員が統一した内容を学ぶことの限界もあることは事実です。
では、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修では、どのようなプログラムで実施することが望ましいのでしょうか。全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶことは大きく分けて以下の3要素になります。
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義
- パワハラ(パワーハラスメント)の類型と種類
- パワハラ(パワーハラスメント)防止対策
このように大きく分けて3つの要素をプログラムに盛り込むことで、パワハラ(パワーハラスメント)の基礎知識が身に付きます。職場で働く人が統一した意識を醸成することで、パワハラ(パワーハラスメント)に該当するような言動が職場では望ましくないことを理解し、パワハラ(パワーハラスメント)の防止につなげることが可能となります。
では、次に、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ「パワハラ(パワーハラスメント)防止対策」について詳しくみてまいりましょう。
6. 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶパワハラ防止対策
■ 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶパワハラ(パワーハラスメント)防止対策
全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶパワハラ(パワーハラスメント)防止対策は、全ての階層や立場の人たちが共通して取り組めることになります。管理職であれば指導方法等、より具体的なスキルを身に着けることが必要となりますが、職場で働く全ての人たちが集う全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修では、先ず以下についての意識の統一を図ることが重要です。
- 職場とは何をしに来るところか
- 仕事とは何か
このコラムを読んでいる方の中には、パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として、コミュニケーション等のスキルを学ぶことが重要だと思っている方も多いと思います。もちろん、職場のパワハラ(パワーハラスメント)を防止するためにはスキルの習得も必要ではあるものの、スキルを身に着ける前に先述した2つについて考える必要があります。
なぜ、「職場とは何をしに来るところか」、「仕事とは何か」についてパワハラ(パワーハラスメント)を防止する上で考える必要があるのかというと、「職場」や「仕事」の本来の意味を理解することで、働く人たちが「何をすることが必要か」が必然的に理解できるようになるからです。
では、「職場とは何をしに来るところか」、「仕事とは何か」について理解を深めていきたいと思います。
7. パワハラ(パワーハラスメント)防止のための職場と仕事の位置づけ
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止のための職場と仕事の位置づけ
「職場とは何をしに来るところか」、「仕事とは何か」について、言葉の意味から考えていきたいと思います。
- 職場 「事業所・工場などにおける各自の受持ちの仕事場」
- 仕事
- 「する事。しなくてはならない事。特に、職業・業務を指す。」
- 「事をかまえてすること。」
- かまえる
- 「(整った形に)組み立ててつくる。」
- 「あらかじめ用意する。準備しととのえる。」
- 「事をなすため心に用意する。計画する。」
出典:広辞苑
「職場とは何をしに来るところか」、「仕事とは何か」について、言葉の意味から定義をすると以下のようになります。
職場とは、事業所や工場などにおける各自の受け持ちのしなくてはならない事を準備しととのえてする仕事場。
このように言葉の意味から「職場とは何をしに来るところか」、「仕事とは何か」について考察すると非常に「シンプルで分かりやすく」なります。しかし、このようなシンプルで分かりやすい職場や仕事が、働く現場では、「複雑で分かりにくく」なります。そして、その「複雑で分かりにくく」なった職場では、人を傷つけるパワハラ(パワーハラスメント)が多く起きています。
では、なぜ、「シンプルで分かりやすい」仕事をする職場が、「複雑で分かりにくく」なり、パワハラ(パワーハラスメント)が起きてしまうのでしょうか。
それは、人間には「感情」があるからです。では、次に「感情」とは何かについて理解を深めていきましょう。
8. パワハラ(パワーハラスメント)防止対策「感情」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止対策「感情」とは
先述したように、職場とは、本来であれば、「シンプルで分かりやすい場所」であるものの、実際は「複雑でわかりにくい場所」になりパワハラ(パワーハラスメント)が起きています。その理由はさまざまですが、考えられる理由の1つとしては、人間には「感情」があるからです。
では、私たち人間が、職場でパワハラ(パワーハラスメント)を起こす原因の1つである「感情とは何か」について言葉の意味から考えていきましょう。
- 感情
- 喜怒哀楽や好悪など、物事に感じて起こる気持。「—を害する」「—がたかぶる」
- 〔心〕精神の働きを知・情・意に分けた時の情的過程全般を指す。情動・気分・情操などが含まれる。「快い」「美しい」「感じが悪い」などというような、主体が状況や対象に対する態度あるいは価値づけをする心的過程。
- 感情的 理性を失って感情に片寄るさま。興奮するさま。「すぐ—になる」
出典:広辞苑
「感情」を言葉の意味から理解すると私たち人間にとっては生きていく上で必要な心的過程になることが理解できます。しかし、この「感情」が「感情的に」になった時に、相手も自分も傷つけるパワハラ(パワーハラスメント)になってしまうのです。パワハラ(パワーハラスメント)が起きる時の「感情的」な状態とは皆さんもご存知の通り「怒り」であることは言うまでもありません。
では、私たち人間が生活を営む上で必要な「感情」と上手につきあい、パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす怒りに翻弄され「感情的」にならないためにはどうすれば良いのでしょうか。
パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす怒りに翻弄され「感情的」にならないための対策の1つが、「~すべき」「~あるべき」という物事を自分だけのルールで判断する思考からの脱却です。この自分だけのルールである「~すべき」「~あるべき」という潜在意識は、私たちがこの世に生まれてから今に至るまでの経験や教えにより長い時間をかけて蓄積してきた考え方のため、簡単に修正することは難しくなります。
では、どうすれば、パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす怒りの原因となる自分だけのルールである「~すべき」「~あるべき」という潜在意識を修正することができるのでしょうか。
9. パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす潜在意識「~すべき」
■ パワハラ(パワーハラスメント)を引き起こす潜在意識「~すべき」
私たちは、生まれてから今に至るまでに、様々な経験や学びを通し、物事を判断する力を培ってきました。このような学びがあるからこそ、社会的規律が保たれ、私たちが安心安全に暮らせる社会が作られてきています。
この、物事を判断する力の根底にあるのが、「~であるべき」「~すべき」などという潜在意識になりますが、この潜在意識が強すぎたり、この潜在意識に強いこだわりを持ちすぎたりするとき、私たち人間は、その意識から逸脱した状況や人に対してパワハラ(パワーハラスメント)に該当する言動により攻撃的になってしまうのです。
社会のルールというのは、誰もが守らなければいけない法律に基づいたもの、それから、先に述べた個人の経験から判断されるものの大きく2つに分けて成り立っています。法律というのは、国が定めているため個人としての力は及ばず「絶対に守らなければならないルール」である一方、各自の判断に基づくルールは「誰しもが必ず守らなければならないルールではない」ことを理解しなければなりません。
パワハラ(パワーハラスメント)の加害者(行為者)になる人の特徴の1つが、「~であるべき」「~すべき」への強いこだわりから、同じ職場で働く人に対して、自分のルールである「~であるべき」「~すべき」から判断することにより、相手を傷つけるパワハラ(パワーハラスメント)を引き起こしていることが挙げられます。
パワハラ(パワーハラスメント)の加害者(行為者)にならないためには、自分だけのルールは、あくまでも自分だけのルールであり、自分以外の人が必ずしも守らなければならないルールでないことを理解することが求められます。そのためにも、自分だけのルールである「~であるべき」「~すべき」という潜在意識を「~であったらいいな」「~してくれたらいいな」という緩やかな意識に書き換える作業が必要になります。
パワハラ(パワーハラスメント)を起こさないための潜在意識の書き換えは、一朝一夜でできることではありませんが、自分だけのルールを理解し、日常業務の中で意識して地道に書き換える作業をすることで、緩やかな意識にすることは可能です。
10. まとめ
今回のコラムでは、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ防止対策」について学んできました。パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施することは義務ではなく、あくまでも努力義務ではあるものの、組織でパワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策としては重要な位置づけであることに変わりはありません。
ただ、目的がはっきりしないまま、ただなんとなくパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を毎年実施する、という感覚であれば、組織におけるパワハラ(パワーハラスメント)を防止する観点からの有効性は低くなります。働く人々の時間や組織のコストを無駄なものにしないためにも、組織の現状を把握し、分析し、そして何を学ぶことでパワハラ(パワーハラスメント)の発生を防ぐことができるか考えた上で、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ内容を決めることが大切です。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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