パワハラ裁判例~被害者自殺の損害賠償として約1億円~

パワハラ裁判例~被害者自殺の損害賠償として約1億円~

パワハラ裁判例~被害者自殺の損害賠償として約1億円~

  • 判例のポイント
    • いわゆる「ブラック」な職場における、上司の新人医師に対するパワハラ(身体的な攻撃・精神的な攻撃・過大な要求)により、受け手がうつ病を発症して自殺した事案。
    • 使用者の安全配慮義務違反と自殺の相当因果関係を肯定し、自殺についての損害賠償まで認めた。 
    • 公立病院における事案のため、国家賠償請求訴訟となっている。 


  • 行為者(加害者): D1(整形外科医長)、D2(整形外科部長)

  • 受け手(被害者): V医師(2年間の研修医を終えて半年、大学病院から派遣された専門医1年目の新人医師。うつ病を発症して自殺)

  • D1医長の言動
    • 握り拳で1回ノックするようにV医師の頭を叩いた。  
    • その仕事ぶりでは給料分に相当していないこと、これを「両親に連絡しようか。」などと言った。  

  • D2部長の言動
    • D1医長がV医師の頭を叩いたことに関して、院長からD1を指導するように言われたにも関わらず、行わなかった。 
    • 手術の際に、V医師に対し、「田舎の病院だと思ってなめとるのか。」と言った。 

  • Vの自殺
    • Vはうつ病を発症し、自殺した。

  • 遺族による提訴
    • V医師の父母が、D1・D2および勤務先病院を被告として損害賠償請求訴訟を提起した。

  • 判決の概要  
  • 広島高裁松江支部は、使用者である公立病院組合(特別地方公共団体)に対し、合計約1億111万円(逸失利益+V医師の死亡慰謝料+弁護士費用等)の賠償を命じた(国賠事案であるため、D1らは責任を負担しない)。



  • 判決の理由
    • D1・D2の言動は、威圧ないし侮辱的で、「社会通念上許容される指導または叱責の範囲を明らかに超えるものである」。 

    • V医師の前任医師らが、そろって、V医師の配属科は「専門医としての経験が1年ないし2年といった者には負担が大きかったこと、D1やD2に相談すると怒鳴られたり、無能として攻撃されたりするので、質問するのを委縮するようになったこと、D1らから患者や看護師らの面前でも罵倒されたり、頭突きや器具で叩かれるなど精神的にも相当追い詰められたこと等を供述し、実際に半年で本病院を去った医師が3名存在する。 

    •  

    • D1・D2は、「経験の乏しい新人医師に対し通常期待される以上の要求をした上、これに応えることが出来ず、ミスをしたり、知識が不足して質問に答えられないなどした場合に、患者や他の医療スタッフの面前で侮辱的な文言で罵倒するなど、指導や注意とはいい難い、パワハラを行っており、また質問をしてきた新人医師を怒鳴ったり、嫌味をいうなどして不必要に委縮させ、新人医師にとって質問のしにくい、孤立した職場環境となっていたことは容易に推認することができる」 

    • V医師は、前任者らと同様、度々、D1・D2から患者や看護師らの面前で罵倒ないし侮辱的な言動を含んで注意を受けていたことは容易に推測され、このような状況の下でV医師は一層委縮し、D1・D2らに質問もできず1人で仕事を抱え込み、一層負荷が増大するといった悪循環に陥っていったものと認められる」 

    • D1・D2は、V医師の勤務負担の軽減やより基本的な内容についても指導を行うなどの配慮を示していたものの、威圧ないし侮辱的な言動を継続しており、V医師を精神的・肉体的に追い詰める状況が改善・解消したものとは認められない。 

    • 以上を総合すると、V医師は、うつ病等の原因となる程度の長時間労働を強いられていたうえ、質的にも、専門医として1年目というV医師の経歴に対して相当過重なものであったばかりか、D1・D2によるパワハラを継続的に受けていたことが加わり、これらが重層的かつ相乗的に作用して、一層過酷な状況に陥ったものと評価される。 

    • D1・D2の言動とV医師のうつ病発症との間には相当因果関係が認められ、V医師の自殺はうつ病の精神障害の症状として発現したと認めるのが相当だから、D1・D2の言動とV医師の自殺との間の相当因果関係も認めることができる。 

    • 勤務先病院は、V医師の就労環境が過酷であり、V医師が心身の健康を損なうおそれがあることを具体的かつ客観的に認識しえたにもかかわらず、何らの対策を講じることなく、新人医師に我慢してもらい、半年持ってくれればよく、持たなければ本人が派遣元の大学病院に転属を自ら申し出るだろうとの認識で放置していたことすらうかがえるから、勤務先病院には、V医師の心身の健康に対する安全配慮義務違反が認められる。 

    • 国賠事案であるため、D1らの個人としての不法行為責任は否定され、病院の賠償責任のみが認められる(国賠法の解釈により、公務員個人は責任は負わないとされている)。 



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