パワハラの判断基準はパワハラ加害者(行為者)か否かの分かれ道

Column – 4
パワハラ加害者(行為者)対応の豆知識
~パワハラの判断基準はパワハラ加害者(行為者)か否かの分かれ道~

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パワーハラスメント(パワハラ)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワーハラスメント(パワハラ)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワーハラスメント(パワハラ)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。前回は、「パワーハラスメント(パワハラ)の定義」について詳しく読み解いてみましたが、今回は、「パワーハラスメント(パワハラ)の判断基準」について「職場のパワーハラスメント(パワハラ)の6類型」をベースに見ていきましょう。

【目次】

  1. 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の6類型
  2. 「身体的な攻撃」とは
  3. 「精神的な攻撃」とは
  4. 「人間関係からの切り離し」とは
  5. 「過大な要求」とは
  6. 「過小な要求」とは
  7. 「個の侵害」とは
  8. まとめ

 1. 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の6類型


■ 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の6類型とは

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)  

  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)


■ 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の6類型は「例示列挙」

パワーハラスメント(パワハラ)の6類型は、「限定列挙」ではなく、「例示列挙」です。つまり、パワーハラスメント(パワハラ)として問題となる行為は、この6類型だけに限られません。これら以外の言動もパワーハラスメント(パワハラ)に該当する可能性があります。


■ 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の判断

職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の判断は、この6類型をパワーハラスメント(パワハラ)の典型類型と位置付けて、これらに限らず、職場において問題行動となり得る言動とは何かを検討していくことが必要です。


 2. 「身体的な攻撃」とは


■ 「身体的な攻撃」の該当すると考えられる例

  1. 人格を否定するような発言をすること。  

  2. 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。

  3. 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。

  4. 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛に送信すること。


■ 「身体的な攻撃」の該当しないと考えられる例

  1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意すること。  

  2. その企業の業務の内容や性質等に照らして、重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意すること。  


■ 「身体的な攻撃」の考え方

業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできません。



 3. 「精神的な攻撃」とは


■ 「精神的な攻撃」の該当すると考えられる例

  1. 打撲、足蹴りを行うこと。  

  2. 相手に物を投げつけること。


■ 「精神的な攻撃」の該当しないと考えられる例

  1. 誤ってぶるかること。  


■ 「精神的な攻撃」の考え方

業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲を超えるものと考えられます。



 4. 「人間関係からの切り離し」とは


■ 「人間関係からの切り離し」の該当すると考えられる例

  1. 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修をさせたりすること。  

  2. 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。


■ 「人間関係からの切り離し」の該当しないと考えられる例

  1. 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。  

  2. 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。  


■ 「人間関係からの切り離し」の考え方

業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲を超えるものと考えられます。



 5. 「過大な要求」とは


■ 「過大な要求」の該当すると考えられる例

  1. 長時間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。 

  2. 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。

  3. 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。


■ 「過大な要求」の該当しないと考えられる例

  1. 労働者を育成するために現状より少し高いレベルの業務を任せること。 

  2. 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。 


■ 「過大な要求」の考え方

業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。



 6. 「過小な要求」とは


■ 「過小な要求」の該当すると考えられる例

  1. 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。

  2. 気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。


■ 「過小な要求」の該当しないと考えられる例

  1. 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。 


■ 「過大な要求」の考え方

業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。



 7. 「個の侵害」とは


■ 「個の侵害」の該当すると考えられる例

  1. 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。

  2. 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。


■ 「個の侵害」の該当しないと考えられる例

  1. 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。 

  2. 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。 


■ 「過大な要求」の考え方

業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。



 8. まとめ

実際の職場においては、これらの6類型に基づいて、パワーハラスメント(パワハラ)に該当するかの判断を行うことになります。しかし、通常の業務とパワーハラスメント(パワハラ)の線引きの難しさから、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右されることもあります。したがって、各企業・職場で認識をそろえ、適切な対応をすることが重要です。

パワーハラスメント(パワハラ)か否かの判断については、パワーハラスメント(パワハラ)6類型だけにとらわれるのではなく、パワーハラスメント(パワハラ)問題の本質について理解を深め、ケースバイケースで判断していくことが必要となります。

今回は、「パワーハラスメント(パワハラ)の判断基準」について、厚生労働省から示されている6類型をベースに説明しました。次回は、「パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐために事業主が雇用管理上講ずべき措置」ついて見てまいりましょう。


 最後に

パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。


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