Column – 5
パワハラ加害者(行為者)対応の豆知識
~事業主ができるパワハラ加害者(行為者)を生まない措置~
パワーハラスメント(パワハラ)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワーハラスメント(パワハラ)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワーハラスメント(パワハラ)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。前回は、「パワーハラスメント(パワハラ)の判断基準」について「職場のパワーハラスメント(パワハラ)の6類型」をベースに理解を深めていきましたが、今回は、「パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐために事業主が雇用管理上講ずべき措置」、について見ていきましょう。
【目次】
- パワーハラスメント(パワハラ)対策の義務化
- パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐために事業主が雇用管理上講ずべき措置とは
- 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」とは
- 「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」とは
- 「職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)への事後の迅速かつ適切な対応」とは
- 「併せて講ずべき措置」とは
- まとめ
1. パワーハラスメント(パワハラ)対策の義務化
■ パワーハラスメント(パワハラ)対策の義務化
働き方改革の一環として、さまざまな法改正とともに職場のパワーハラスメント(パワハラ)対策の法制化が推進され、2019年5月に「労働施策総合推進法の改正案」が国会で承認、同年6月5日に公布され、パワーハラスメント(パワハラ)対策の義務化が正式に決定されました。
「労働施策総合推進法」の正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。同法の改正により、大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から、パワーハラスメント(パワハラ)防止のための措置を講ずることが、事業主に義務づけられました。
■ パワーハラスメント(パワハラ)対策が義務化された事業主とは
事業主とは、会社を経営する事業主だけでなく、医療法人、社会福祉法人、学校法人、各種団体などの事業主も含まれます。
従業員規模にもかかわらず、業種にもかかわらず、どの事業主もパワーハラスメント(パワハラ)防止の措置義務を果たさなければなりません。
2. パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐために事業主が雇用管理上講ずべき措置とは
■ 事業主が雇用管理上講ずべき措置とは
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)を防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)への事後の迅速かつ適切な対応
- 併せて講ずべき措置
事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければなりません。
3. 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」とは
■ 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」とは
- パワーハラスメント(パワハラ)の内容
- パワーハラスメント(パワハラ)を行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
- パワーハラスメント(パワハラ)の行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
■ どのように「周知・啓発」するのか
- パワーハラスメント(パワハラ)防止研修の実施(研修の実施は努力義務)
- パワーハラスメント(パワハラ)防止を明文化して就業規則に記載する
- 組織の代表がパワーハラスメント(パワハラ)防止に関する方針を伝える
4. 「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」とは
■ 「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」とは
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。パワーハラスメント(パワハラ)が現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワーハラスメント(パワハラ)に該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。
■ 「相談窓口をあらかじめ定めていると認められる」例
- 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
- 相談に対応するための制度を設けること
- 外部の機関に相談への対応を委託すること
5. 「職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)への事後の迅速かつ適切な対応」とは
■ 「職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)への事後の迅速かつ適切な対応」とは
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
- 事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること。
■ 「事後の迅速かつ適切な対応」とは
- 調査チームを立ち上げ、ヒアリング等の実施
- 被害者と行為者の物理的距離を置く
- 行為者へ報復措置の禁止を伝える
- 被害者の医的措置を講ずる
- 行為者からの相談体制を整える
- 行為者へ再発防止研修を受講させる
6. 「併せて講ずべき措置」とは
■ 「併せて講ずべき措置」とは
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。
- 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
■ 「併せて講ずべき措置」の具体的対策
- 調査チーム、ヒアリング対象者に守秘義務を徹底させる
- 被害者、および加害者への詮索を禁ずる
- 被害者と加害者が直接接することを禁ずる
- 調査に協力したことによる不利益な取り扱いがないことを明文化する
- 社内外に相談したことによる不利益な取り扱いがないことを明文化する
7. まとめ
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、日常の小さな積み重ねが次第に大きなトラブルに発展しますので、早期発見、早期解決をすることが望ましくなります。そのためには、各組織が「パワーハラスメント(パワハラ)は決して許される行為ではなく、パワーハラスメント(パワハラ)の行為が認められた時には、行為者に対する厳格な処分をする」旨、就業規則等に明文化し、働く人一人ひとりがパワーハラスメント(パワハラ)に対する高い意識を持つことが必要となります。
パワーハラスメント(パワハラ)を防止するためには、組織だけが努力するのではなく、一人ひとりがお互いを思いやり配慮する心を醸成させることが重要となります。
今回まで「パワーハラスメント(パワハラ)」の基本的な概念についてお話をしてきました。次回からは、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための具体的な取り組みについて見ていきたいと思います。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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