Column – 15
パワハラ加害者(行為者)対応の豆知識
~パワハラ加害者(行為者)に関する「事実関係の確認」~
パワーハラスメント(パワハラ)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワーハラスメント(パワハラ)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワーハラスメント(パワハラ)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。さて、前回は、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談担当者の人選」について理解を深めてきました。今回は、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認」について見ていきましょう。
【目次】
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口とは
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談対応の大まかな流れ」とは
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談窓口の役割」とは
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認」とは
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認の適切な対応」とは
- パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認のポイント」とは
- まとめ
1. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口とは
以前のコラムでもお伝えしましたが、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するために、厚生労働省のパワハラ防止指針に示している事業主が雇用管理上講ずべき措置として、「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」をするために、「相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、労働者に周知する」ことが義務付けられています。
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口は、働く全ての人が相談しやすいような相談窓口を設置し、できるだけ初期の段階で気軽に相談できる仕組みを作ることが大切です。
では、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口の「事実関係の確認」について、厚生労働省の「パワーハラスメント 社内相談窓口の設置と運用のポイント」を参考にして学んでみましょう。
2. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談対応の大まかな流れ」とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談対応の大まかな流れ」とは
以前のコラムでもお伝えしましたが、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談対応の大まかな流れ」について復習してみましょう。
- 相談窓口(一次対応)
- 事実関係の確認
- 行為者・相談者への措置検討
- 行為者・相談者へのフォロー
- 再発防止策検討
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口の「相談対応の大まかな流れ」は、このように段階を追って進めていきます。各段階について詳しくみていきますが、今回は「事実関係の確認」の理解を深めてみましょう。
3. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談窓口の役割」とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「相談窓口の役割」とは
以前のコラムでもお伝えしましたが、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口には、相談担当者の役割が大きく分けて2つあります。
1つは「相談の受付(一次対応)」、もう1つは「相談の受付(一次対応)+事実確認など」です。これらの中で、「相談の受付(一次対応)」は基本的に以下のような対応をします。※電話、対面でも基本的な対応方法は同じです。
- 信頼関係を築くための心温まるあいさつを相談者へ伝える
- 相談者へ守秘義務の説明をする
- 相談者の話しを聴く
- 相談者の要望を確認する
- 言い残したことはないか確認する
- 今後の流れを説明する
- 必要に応じて次回の予約をする
- 勇気をもって相談してくれたことに感謝して終了
これらのパワーハラスメント(パワハラ)相談窓口の「相談の受付(一次対応)」の後には、「事実関係の確認」をします。「事実関係の確認」まで行うパワーハラスメント(パワハラ)相談窓口がある一方、「事実関係の確認」は別の担当部署が実施することもあります。
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口が対応する場合でも、他の部署が担当する場合でも、基本的な対応は同じとなりますので、詳しくみてまいりましょう。
4. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認」とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認」とは
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口の相談窓口担当者の相談の一次対応が終わったら、次に「事実関係の確認」を行いますが、重要なポイントがあります。重要なポイントとは、
「相談者の了解を得ているか」
です。「事実関係の確認」をする上で相談者とのトラブルが起きたり、相談担当者との信頼関係が壊れるのは、この「相談者の了解を得ているか」ということがポイントとなります。では、「相談者の了解を得る領域」とはどのようなことでしょうか。
「相談者の了解を得る領域」とは、「相談者が相談した内容が事実かどうか、相手方(推定加害者/行為者)、および同僚等第三者へヒアリングをすることを相談者が希望するかしないか」ということです。
相談者とのトラブルは、相談者へ事実確認をすることへの了解を得ずに、「心配だから」「早く対応しないといけないから」「事が大きくなるといけないから」という担当者の事情だけで先走ってしまうことが原因です。従って、相手方(推定加害者/行為者)、および同僚等第三者へ事実確認のヒアリングをする際は、「必ず了解を得て」から実施してください。
5. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認の適切な対応」とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認の適切な対応」とは
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口へ相談に来た人から了解を得たら、事実関係の確認について迅速かつ適切な対応をすることが重要です。では、事実関係の確認の迅速かつ適切な対応の取組例をみてみましょう。
- 相談窓口担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認する際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなど、その認識にも適切に配慮すること。
- 相談者と相手方(推定加害者/行為者)との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実を聴取する等の措置を講ずること。
- 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、労働施策総合推進法第30条の6、男女雇用機会均等法第18条又は育児・介護休業法第52条の5に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねることも考えられること。
パワーハラスメント(パワハラ)の相談窓口に寄せられた相談の事実確認は、想像する以上に時間や気力体力を費やします。公平な立場での対応を心掛けることが重要となりますが、次に事実関係の確認をする上でのポイントをお伝えします。
6. パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認のポイント」とは
■ パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口「事実関係の確認のポイント」とは
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口に寄せられた相談について、相談者の了解を得た上で「事実関係の確認」をします。事実関係の確認をする上でのポイントは以下の通りです。
- 事案が生じてから、誰がどのように対応するのか検討するのでは、対応を遅らせることになります。迅速かつ適切な対応をするために、相談窓口と個別事案に対応する担当部署との連携や手順などをあらかじめ明確に定めておくこと。
- 事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐため、相談があったら迅速に開始すること。
- 事実確認に当たっては、相手方(推定加害者/行為者)の言い分、希望などを十分に聴くこと。
- 相談者が相手方(推定加害者/行為者)に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしもパワーハラスメント(パワハラ)を受けたことを単純に否定する理由にならないことに留意すること。
- 事実確認が完了していなくても、当事者の状況や事案の性質に応じて、被害の拡大を防ぐため、被害者の立場を考慮して臨機応変に対応すること。
- パワーハラスメント(パワハラ)があったのか、またはパワーハラスメント(パワハラ)に該当するか否かの認定に時間を割くのではなく、問題となっている言動が直ちに中止され、良好な就業環境を回復することが優先される必要があることを認識すること。
7. まとめ
パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口に寄せられた相談において、相談者の了解を得た上で事実関係の確認をする場合は、先に述べたようなポイントを考慮し迅速かつ適切な対応をすることが重要です。
事実関係の確認の対応を遅らせたり、適切な対応ができない場合は、パワーハラスメント(パワハラ)相談窓口に寄せられた問題の解決ができないどころか、問題が思わぬ方向に転がる可能性があります。
事実関係の確認は、想像する以上に時間がかかり、担当者の心身の疲労を伴うことも少なくありません。問題が起きてから慌てて準備をするのではなく、あらかじめ対応手順などを定めたマニュアルの整備をし準備しておくことをおすすめします。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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