パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因

Column – 62
パワハラ加害者(行為者)対応の豆知識
~パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因

Column – 62

パワハラ防止法が施行されてから、一人でも働く人を雇っている組織では、パワハラが起こらないよう対策を講じなければなりません。パワハラを防ぐための対策として、パワハラ防止を啓発するポスターの設置、パワハラが起きていないかに関する無記名アンケート、又はパワハラ防止研修の実施が考えられます。しかし、近年、パワハラ防止研修をするたびに、パワハラが増えている可能性がある、という指摘があります。今回は、「パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす理由」について考えていきたいと思います。



【目次】
  1. 事業主に義務付けられたパワハラ防止対策とは
  2.       
  3. パワハラの内容、方針等の明確化と周知・啓発のためのパワハラ防止研修
  4.  
  5. パワハラを防止するための研修とは  

  6. パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因とは  

  7. まとめ


 1. 事業主に義務付けられたパワハラ防止対策とは


■ 事業主に義務付けられたパワハラ防止対策とは

2019年の第198回通常国会において「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、これにより「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「労働施策総合推進法」という。)が改正され、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」)防止対策が事業主に義務付けられました。  


職場におけるパワハラを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。  


  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発  


    • パワハラの内容、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること   


    • パワハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること    


  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備  


    • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。  


    • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。  


    • パワハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。  


        
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応  


    • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。


    • 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。


    • 事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。


    • 再発防止に向けた措置を講ずること。


        
  • 併せて講ずべき措置(プライバシーの保護、不利益取扱いの禁止等)  


    • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。


    • 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したこと等 を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。



以上が事業主が、その雇用する労働者又は事業主(法人である場合はその役員)自身が行う職場におけるパワハラを防止するため雇用管理上講ずべき措置です。繰り返しになりますが、事業主は、これらの措置を必ず講じなければなりません。


では、雇用管理上講ずべき措置の中で、パワハラ防止研修の実施について、どのように書かれているか確認していきたいと思います。  



 2. パワハラの内容、方針等の明確化と周知・啓発のためのパワハラ防止研修


■ パワハラの内容、方針等の明確化と周知・啓発のためのパワハラ防止研修

職場におけるパワハラの内容及び職場におけるパワハラを行ってはならない旨の事業主の方針等を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するための具体例は以下の通りです。  


  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、事業主の方針を規定し、当該規定と併せて、パワハラの内容及びパワハラの発生の原因や背景等を労働者に周知・啓発すること。  


  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等にパワハラの内容及びパワハラの発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載し、配付等すること。  


  •     
  • 職場におけるパワハラの内容及びパワハラの発生の原因や背景並びに事業主の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。  



以上が、パワハラの内容、方針等の明確化と周知・啓発のための具体例になります。では、次に具体例のポイントについて、お伝えします。  


  • 「事業主の方針」とは、パワハラを行ってはならない旨の方針です。  


  • 「その他の職場における服務規律等を定めた文書」としては、従業員心得や必携、行動マニュアルなど、就業規則ではないものの社内ルールを定めたものが考えられます。  


  •     
  • 「研修、講習等」を実施する場合には、定期的に実施する、調査を行うなど職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施するなどの方法が効果的と考えられます。   


  •  
  • パンフレットなどにより周知する場合は、全労働者に確実に周知されるよう、配付方法などを工夫しましょう。   



これらのポイントを踏まえた、周知・啓発を行うことが事業主に義務付けられていることは理解できたと思います。では、次にパワハラを防止するための研修について考えていきましょう。  



 3. パワハラを防止するための研修とは


■ パワハラを防止するための研修とは

職場におけるパワハラの内容及び職場におけるパワハラを行ってはならない旨の事業主の方針等を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発するための具体的な対策の1つとして、研修、講習等を実施することはお伝えした通りですが、研修等で受講者が学ぶ必要のある内容について考えていきましょう。  


まず、パワハラを防止するために研修で学ぶポイントは以下の通りです。  


  • パワハラの発生の原因や背景には、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題があると考えられます。このため、これらを幅広く解消していくことが、職場におけるパワーハラスメントの防止の効果を高める上では重要です。


  • 一見、特定の労働者に対する言動に見えても、周囲の労働者に対しても威圧するために見せしめとして行われていると客観的に認められるような場合もあります。このような場合は、周囲の労働者に対するパワハラと評価できる場合もあることについて学ぶことが大切です。


  • 日常的なコミュニケーションを取るよう努めることや定期的に面談やミーティングを行うことにより、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化や円滑化のために必要な取組を促すことができるような内容を学ぶことが重要です。 


  • 感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修、マネジメントや指導についてなどについての研修を実施し、労働者が感情をコントロールする能力やコミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図れるようになることを目的とすることが大切です。 



また、パワハラを防止するために実施するパワハラ防止研修等で重要なことは、役員、管理職、一般職などの階層毎に分けてパワハラ防止研修を実施することです。理由としては、それぞれの役割によって学ぶことが異なるからです。  


例えば、役員であれば、法的なリスクや過去の裁判例など、会社の経営を揺るがしかねないパワハラと法律の関係などについて理解することが重要となります。  


また、管理職であれば、管理職がパワハラ加害者になる可能性が一番高い立場ですので、パワハラと指導の違い、パワハラにならない指導方法、怒ると叱るの違い、部下のやる気を上げるコミュニケーションなどを学ぶ必要があります。  


そして、一般職については、パワハラの概念を理解した上で、パワハラと指導の違いを知り、適切な指導とパワハラを区別できるようになることが大切です。  


では、最後に、パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因について考えていきましょう。



 4.パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因とは  


■ パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因とは 

職場でパワハラが起こらないような対策を講ずることは事業主に義務付けられていることについて学んできましたが、パワハラが職場で起こらないための対策の1つである、パワハラ防止研修をするとパワハラ加害者やパワハラ行為者を余計に増やすのではないか、という意見を聞いたり、相談を受けたりすることがあります。では、なぜ、このような意見や相談が増えてきたのでしょうか?


おそらく、パワハラ防止研修の実施が直接的にパワハラ加害者やパワハラ行為者を増やしているということではなく、パワハラ防止研修の中で以下のことについての情報が正しく伝達されていなかったり、伝えていなかったり、説明が十分でなかったことが原因だと考えています。


  • パワハラの概念を正しく理解できていない   


  • 自分が不快だと感じればパワハラだと思っている   


  • パワハラ加害者は上司や先輩など指導的立場の人たちだけがなると勘違いしている


  • 職場で解決できる問題を人事部などに解決してもらおうとしている   


  • 適切な指導ですらパワハラだと勘違いしている   


  • なんでもかんでもパワハラという言葉一括りで捉え自分の不快感を訴える 


  • 自分のミスなどは棚に上げ権利を主張することにエネルギーを費やしている


パワハラを防ぐためには、自分が辛い、苦しいと感じる指導を受けたときには、我慢をせずに周囲の人たちや相談窓口に相談することが重要ではあるものの、明らかに世の中で許容される範囲を超える必要かつ相当性がない理不尽な言動以外は、自分が不快に感じる原因を自分の中に見つけることが大切です。


また、職場では、職場における上司からの命令には以下の通り従う義務があります。


  • 上司の命令には、自分としては納得のいかないものであっても、違法・著しく不当なものでない限りは従う義務がある。上司の命令に従わないことがまかり通ってしまうと、職場の秩序は維持できなくなってしまうからです。  


  • 判例でも、会社は労働者に、その存立を維持し目的たる事業を円滑に運営するため、企業秩序に服することを求めることができるとされています。  


  • 労働契約は、労働者が労務を提供し、使用者が賃金を支払う義務を負う双務契約であり、労働者には就業時間中職務に専念する義務があります。就業時間中に上司の命令に従わず仕事とは何の関係もないことをした場合には、その時間は労務を提供したとは言えません。 


パワハラという社会問題は、パワハラという言葉が作り上げた現代社会特有の社会的課題になりますが、その社会的課題であるパワハラを防ぐためのパワハラ防止研修では、なんでもかんでもパワハラという言葉一括りにしないような物事の捉え方や問題に対する解決する方法を学ぶことが、パワハラを防止するためには重要です。 


今、日本の社会では、パワハラと同じくらい問題となっている、「ハラスメントハラスメント」というハラスメントが増えています。ハラスメントハラスメントとは、主に上司や先輩からの注意・指導・業務命令に対して「それはハラスメントだ!」と過剰に主張することです。本来ならばハラスメントに該当しない言動に対して、悪意を持って行われることが特徴で、指導の対象となった、自分のミスなどは棚に上げ、指導されたことに対する不快感を周囲に広め同情を買うために行われます。


ここまで、パワハラ防止研修がパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やす原因について考察してきました。パワハラ防止研修でのパワハラの概念やパワハラと指導の違いなどについての学びが十分ではない受講者が、なんでもかんでもパワハラである、という捉え方をすることで、パワハラ加害者やパワハラ行為者を増やしていることが、パワハラ防止研修をするとパワハラ加害者・パワハラ行為者を増やすのでは?という考えに至る原因の1つだということが理解できたと思います。



 5. まとめ


■ まとめ

パワハラ防止法が施行されてから数年が経ちますが、パワハラが減るどころか、ますますパワハラ事案が増えてきている印象があります。パワハラを防ぐことを目的に実施する研修は、やることが目的ではありません。パワハラに関する知識を正しく理解し、職場で適切な指導が継続され、指導をされる側も問題の原因を自分の中にも見つける努力をすることが、パワハラを撲滅するためには重要です。   


なんでもかんでもパワハラという言葉一括りで問題を訴える人が増え続けることがあれば、それは当然のことながらパワハラ加害者やパワハラ行為者を増やす直接的な原因となることを理解し対策を講じなければ、半永久的にパワハラは日本の社会に存在し続けるのではないかと懸念しています。   



 最後に

パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワハラ加害者/パワハラ行為者更生カウンセリング研修、パワハラ防止研修をはじめ、パワハラを防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。


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