Column – 63
パワハラ加害者(行為者)対応の豆知識
~パワハラとパワハラ加害者(行為者)という言葉が職場に与えた影響~

パワハラ防止法が施行されてから、パワハラに関するニュースを多く見るようになりました。特に最近は、「パワハラ」という言葉が独り歩きしている記事も多く見受けられます。今回は、「パワハラとパワハラ加害者・パワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響」について考えて行きましょう。
【目次】
1. パワハラという言葉が作られた目的は果たせているのか?
■ パワハラという言葉が作られた目的は果たせているのか?
パワハラという言葉が2001年に日本で生まれてから、パワハラという言葉が私たちの働く現場を変えたことは、昭和から現代にかけて組織の一員として働いた人であれば、身をもって実感していると思います。この変化が、日本社会にとって望ましい変化だったのか、それとも望ましくない変化だったのか、について一概に「はい」「いいえ」という2者択一で回答できるほど簡単なことではありません。
「パワハラ」という言葉を作ったのは、職場での威圧的な態度による嫌がらせに悩んでいる人たちを助けることが目的だったと思いますが、その目的を果たせている場合もあれば、果たせていないことも多くあります。では、パワハラという言葉が作られた目的を果たせているのは、どのようなケースなのでしょうか?
それは、明らかなる理不尽な言動に対して、厳正に抗議することができるようになったことです。パワハラという言葉が生まれる前までは、上司や先輩の腹の虫が悪い場合は、ご機嫌により正当な目的とは言えない必要性のない行為が行われていたこともありました。ただ、優越的な関係を背景にして行われていたため、抗議することも、無視することも、何もできず、ただただ我慢を強いられてきました。
それが、パワハラという言葉が日本で生まれた結果、今まで我慢を強いられていた人たちが、理不尽な言動に対して声を上げやすくなりました。さらに、パワハラ防止法が施行された後は、相談窓口の設置が義務付けられたことから、より相談がしやすい環境が整えられました。
一方、パワハラと言う言葉が生まれたことにより目的以外のことが起こるようになっていることも事実です。それは、パワハラという言葉を使い、嫌いな上司を異動させる手段にしたり、自分がミスした事が原因で上司から叱られたことに対して不快に感じた時に人事部へ通報したり、するという理不尽な出来事も多く起きています。このような逆理不尽な出来事により新たなハラスメントが起きています。それは、「ハラスメント・ハラスメント」というハラスメントです。
では、次にハラスメント・ハラスメントについて学んで行きましょう。
2. ハラスメント・ハラスメントというハラスメントとは
■ ハラスメント・ハラスメントというハラスメントとは
パワハラという社会的課題が増え続けている中、新たなハラスメントが多く生まれています。その中でも深刻な問題を引き起こしているが、「ハラスメント・ハラスメント」というハラスメントです。では、深刻な問題を引き起こしている、「ハラスメント・ハラスメント」というハラスメントとは、どのようなハラスメントなのでしょうか?
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主に上司や先輩からの注意・指導・業務命令に対して「それはハラスメントだ!」と過剰に主張すること
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本来ならばハラスメントに該当しない言動に対して、悪意を持って行われることが特徴
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指導の対象となった、自分のミスなどは棚に上げ、指導されたことに対する不快感を周囲に広め同情を買う
このように、ハラスメント・ハラスメントとは、上司などからの指導に対し、自分が感じる不快な思いに対して必要以上に過剰に騒ぎ立てることを言います。過剰に主張している人にとっては、「理不尽なことをされた人」ということをより多くの人に知ってもらいたいという欲求が背景にあると思いますが、逆に自分が理不尽なことをしている、という意識は無に等しいことが理解できます。
また、部下が上司や先輩に対して、自分が不快だと感じることに対しては、「それ、ハラスメントですよ」と脅かすような行為も含まれ、適切なコミュニケーションすらできない環境に陥る危険性があります。
3. パワハラとパワハラ加害者・パワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響
■ パワハラとパワハラ加害者・パワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響
セクハラという言葉が生まれ、パワハラという言葉が生まれた後は、○○ハラスメントという何十種類ものハラスメントがこの世に生まれています。その中で、職場の中で起こる可能性があるハラスメントとは、どのようなハラスメントなのでしょうか?
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マタニティハラスメント
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パタニティハラスメント
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ケアハラスメント
モラルハラスメント
ロジカルハラスメント
ジェンダーハラスメント
テクノロジーハラスメント
このように、ハラスメントには様々な種類がありますが、最近の傾向としては、なんでもかんでも「ハラスメント」という言葉で表現することで、問題を短絡的に捉えているように感じることもあります。つまり、問題の本質を解決することを目的に「ハラスメント」という言葉を使うのではなく、ネーミングすることで、実態よりも被害を大きく見せたり、実態よりも行為者を悪く見せようとする意図も見受けられます。
ハラスメントという言葉がより広く使われるようになっていますが、その中でも際立つのがパワハラというハラスメントには変わりはありません。そして、パワハラという問題には、必ずパワハラ加害者やパワハラ行為者が存在します。では、パワハラとパワハラ加害者やパワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響はどのようなことなのでしょうか?
まず第一に、職場での問題が解決しずらくなったということです。それは、パワハラやパワハラ加害者、パワハラ行為者という言葉が、問題の本質を見えにくくしたからだと考えています。本来であれば、「○○という問題」があり、「どうすれば○○という問題が解決するか」という問題の本質と、それに対する対策を講ずるだけのはずが、「パワハラが黒か白か」「パワハラが認定されたか」「パワハラ加害者・パワハラ行為者の処分はされたか」「パワハラ加害者・パワハラ行為者を異動させるか」という、問題の本質ではないところに焦点が当てられるようになったことです。
また、パワハラとパワハラ加害者やパワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響としては、パワハラやパワハラ加害者・パワハラ行為者という言葉が生まれたことにより、従業員同士のコミュニケーションが阻害されたということが挙げられます。何か言うと「パワハラだ!」ということを恐れた上司が、部下に話しかけることを控えるだけではなく、指導すらもできなくなっています。本来であれば、パワハラ被害者を救うためにパワハラという言葉が生まれ、働きやすい職場を作ることが目的だったはずが、パワハラ加害者やパワハラ行為者になることを恐れる人たちを生んだことにより、コミュニケーションも指導もない、働きにくい職場が作られるようになってしまいました。
パワハラとパワハラ加害者・パワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響を一言で表すことは難しいですが、強いて言うならば、「人材の分断を生んだ」ということです。
4. まとめ
■ まとめ
今回は、「パワハラとパワハラ加害者やパワハラ行為者という言葉が職場に与えた影響」について考えてきました。パワハラとパワハラ加害者やパワハラ行為者という言葉が作られた背景は理解できますが、20年経った今、この言葉が職場だけではなく、日本社会に与えた負の影響は深刻だと考えています。
人が存在するところには、必ず問題も存在します。ただ、この問題は必ず解決できる問題です。それをパワハラという言葉やパワハラ加害者・パワハラ行為者という表面上の言葉だけに焦点を当てた時には、問題の本質は何も解決しないと思います。パワハラという言葉がこの世に生まれ20年経過した今、今一度、この言葉の真意について一人ひとり考える必要があるのではないでしょうか。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワハラ加害者/パワハラ行為者更生カウンセリング研修、パワハラ防止研修をはじめ、パワハラを防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。