Column – 25
パワハラ防止研修お役立ちマニュアル
~全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ定義~
パワハラ(パワーハラスメント)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワハラ(パワーハラスメント)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。さて、前回は、「パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する頻度」ついて一緒に学びました。今回は、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ定義」について見てまいりましょう。
【目次】
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
- 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義「職場とは」
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義「労働者とは」
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義➀「優越的な関係を背景とした言動」の「蓋然性」が高い関係とは
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義➁「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動の具体例
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義➂「就業環境が害される」とは
- まとめ
1. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
職場で、パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として講じられているのが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修です。2022年4月までに日本全国にある全ての事業主対してパワハラを防止するための対策を講じることが義務付けられましたので、今までパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施していなかった組織でも、初めてパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施しています。
ただし、以前のコラムでも書きましたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の実施は「義務」ではありません。あくまでも、パワハラ(パワーハラスメント)の防止対策の1つとして、取組むことが望ましいとされています。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修以外では、「ポスターの掲示」、「社内システムでの啓蒙」、「パワハラに関する冊子の配布」、「パワハラに関する勉強会」等、さまざまな取組があります。このような対策を講ずれば必ずパワハラ(パワーハラスメント)が防げるか、というと必ずしもそうではないのですが、働く人がパワハラ(パワーハラスメント)に関する意識を高めるためには重要な取組となります。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として「ポスターの掲示」や「パワハラに関する冊子の配布」は、1回の対応で完了し、後は働く人たちにポスターや冊子を見るか、見ないか、を委ねることができますが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する場合は準備することが多くなります。
特に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で何を受講者へ伝えることがパワハラ(パワーハラスメント)を防止する上で重要か、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する際の担当者の頭を悩ませます。また、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を受講する階層によっても学ぶことが異なることから、各階層に向けた望ましいプログラムについて慎重に検討することが必要になります。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」から見てまいりましょう。
2. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を誰が受けるか、について決めることです。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、大きく分けて次のようなグループの中で選定することができます。
- 労働者全員(全ての雇用関係含)
- 新入社員
- 一般職
- 管理職
- 役員
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、これらのグループに分けることができますが、労働者全員と各階層に分かれて実施するのはどちらがよいのでしょうか。
まず、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して実施することのメリットとデメリットをみてみましょう。
3. パワハラ防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットは以下の通りです。
- 全ての労働者に同じ情報を伝えることができる。
- 選定する必要がないので楽である。
- 準備する資料が1種類なので手間が省ける。
- 労働者間での意識が統一される。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するデメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることが難しい場合がある。
- 階層ごとに異なる課題への解決が難しい。
- 立場の弱い人たちが委縮してしまう。
- 話し合いがしずらい。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットとデメリットについてみてきましたが、全員で受講することを選択した場合は、受講者にとってのデメリットの方が多くなります。
一方、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員で受講する選択をした場合は、主催者側にとってのメリットが多くなることから、受講者にとっての学びを深めるためにはあまり望ましい選択ではありません。
では次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層に分けて実施する場合のメリット・デメリットについてみていきましょう。
4. パワハラ防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることができる。
- 階層ごとの課題を解決することができる。
- 階層に適した内容を構築することができる。
- 話し合いがしやすい。
- 同じ立場の人の意見を聴くことができる。
- チームワーク力が強まる。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、受講する人の学びを深めるメリットが多いことが分かります。
では、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するデメリットについても見てみましょう。デメリットは以下の通りです。
- 各階層ごとに研修資料を準備する必要がある。
- 階層ごとの日程や会場の設定をする必要がある。
- 他の立場の人の意見を聴くことができない。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、主催者側へのデメリットはあるものの、受講者側がパワハラ(パワーハラスメント)について学ぶ上でのデメリットは多くはありません。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合と階層ごとに実施する場合のメリット・デメリットについて学んできましたが、それぞれのケースでメリット・デメリットがあることが分かりました。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合のプログラムについて学んでいきましょう。
5. 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
■ 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を全従業員向けに実施する場合は、先述したようにメリット・デメリットがあります。職場で働く人全てが同じ情報を共有できることは望ましい一方、立場により学ぶ課題が異なることから全従業員が統一した内容を学ぶことの限界もあることは事実です。
では、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修では、どのようなプログラムで実施することが望ましいのでしょうか。全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶことは大きく分けて以下の3要素になります。
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義
- パワハラ(パワーハラスメント)の類型と種類
- パワハラ(パワーハラスメント)防止対策
このように大きく分けて3つの要素をプログラムに盛り込むことで、パワハラ(パワーハラスメント)の基礎知識が身に付きます。職場で働く人が統一した意識を醸成することで、パワハラ(パワーハラスメント)に該当するような言動が職場では望ましくないことを理解し、パワハラ(パワーハラスメント)の防止につなげることが可能となります。
では、次に、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ「パワハラ(パワーハラスメント)の定義」について詳しくみてまいりましょう。
6. パワハラ(パワーハラスメント)の定義「職場とは」
■ パワハラ(パワーハラスメント)の定義「職場とは」
- 事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所
- 労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれる
- 労働時間外の「懇親の場」、職員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当する
7. パワハラ(パワーハラスメント)の定義「労働者」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)の定義「労働者」とは
- 正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者
- 派遣労働者は、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主も措置を講ずる必要がある
■ パワハラ(パワーハラスメント)の定義「労働者」に含まれない者とは
- 取引先の従業員、顧客、フリーランスの個人事業主、インターンシップの学生、就職活動中の学生等の求職者
※自組織の労働者に対するのと同様に、ハラスメント行為を厳に慎む必要があります
8. パワハラ(パワーハラスメント))の定義➀
「優越的な関係を背景とした言動」の「蓋然性」が高い関係とは
■ 「優越的な関係を背景とした言動」の「蓋然性」が高い関係とは
- 上司と部下、先輩と後輩、など職制上の関係
- 同僚、又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行えない業務上の優位性の関係
- 同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗、または拒絶することが困難である集団と個人の関係
9. パワハラ(パワーハラスメント)の定義➁
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動の具体例
■ 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動の具体例
- 業務上明らかに正当な目的とは言えない必要性のない行為
- 業務を遂行するための目的は正当であっても、手段として不適当な行為
- 当該行為の回数、頻度、行為者の数等その態様や手段が社会通念上許容される範囲を超える行為
- 人権を侵害する、または人格を否定するような暴言
10. パワハラ(パワーハラスメント)の定義➂「就業環境が害される」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)の定義➂「就業環境が害される」とは
- 当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す
- この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当である
- 言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得る
11. まとめ
今回のコラムでは、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ定義」について学んできました。パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施することは義務ではなく、あくまでも努力義務ではあるものの、組織でパワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策としては重要な位置づけであることに変わりはありません。
ただ、目的がはっきりしないまま、ただなんとなくパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を毎年実施する、という感覚であれば、組織におけるパワハラ(パワーハラスメント)を防止する観点からの有効性は低くなります。働く人々の時間や組織のコストを無駄なものにしないためにも、組織の現状を把握し、分析し、そして何を学ぶことでパワハラ(パワーハラスメント)の発生を防ぐことができるか考えた上で、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ内容を決めることが大切です。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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