Column – 26
パワハラ防止研修お役立ちマニュアル
~全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラの類型と種類~
パワハラ(パワーハラスメント)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワハラ(パワーハラスメント)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。さて、前回は、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ定義」ついて一緒に学びました。今回は、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラの具体例」について見てまいりましょう。
【目次】
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
- 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
- 職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の6類型
- パワハラ(パワーハラスメント)「身体的な攻撃」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)「精神的な攻撃」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)「人間関係からの切り離し」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)「過小な要求」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)「個の侵害」とは
- まとめ
1. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
職場で、パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として講じられているのが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修です。2022年4月までに日本全国にある全ての事業主対してパワハラを防止するための対策を講じることが義務付けられましたので、今までパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施していなかった組織でも、初めてパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施しています。
ただし、以前のコラムでも書きましたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の実施は「義務」ではありません。あくまでも、パワハラ(パワーハラスメント)の防止対策の1つとして、取組むことが望ましいとされています。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修以外では、「ポスターの掲示」、「社内システムでの啓蒙」、「パワハラに関する冊子の配布」、「パワハラに関する勉強会」等、さまざまな取組があります。このような対策を講ずれば必ずパワハラ(パワーハラスメント)が防げるか、というと必ずしもそうではないのですが、働く人がパワハラ(パワーハラスメント)に関する意識を高めるためには重要な取組となります。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として「ポスターの掲示」や「パワハラに関する冊子の配布」は、1回の対応で完了し、後は働く人たちにポスターや冊子を見るか、見ないか、を委ねることができますが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する場合は準備することが多くなります。
特に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で何を受講者へ伝えることがパワハラ(パワーハラスメント)を防止する上で重要か、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する際の担当者の頭を悩ませます。また、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を受講する階層によっても学ぶことが異なることから、各階層に向けた望ましいプログラムについて慎重に検討することが必要になります。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」から見てまいりましょう。
2. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を誰が受けるか、について決めることです。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、大きく分けて次のようなグループの中で選定することができます。
- 労働者全員(全ての雇用関係含)
- 新入社員
- 一般職
- 管理職
- 役員
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、これらのグループに分けることができますが、労働者全員と各階層に分かれて実施するのはどちらがよいのでしょうか。
まず、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して実施することのメリットとデメリットをみてみましょう。
3. パワハラ防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットは以下の通りです。
- 全ての労働者に同じ情報を伝えることができる。
- 選定する必要がないので楽である。
- 準備する資料が1種類なので手間が省ける。
- 労働者間での意識が統一される。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するデメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることが難しい場合がある。
- 階層ごとに異なる課題への解決が難しい。
- 立場の弱い人たちが委縮してしまう。
- 話し合いがしずらい。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットとデメリットについてみてきましたが、全員で受講することを選択した場合は、受講者にとってのデメリットの方が多くなります。
一方、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員で受講する選択をした場合は、主催者側にとってのメリットが多くなることから、受講者にとっての学びを深めるためにはあまり望ましい選択ではありません。
では次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層に分けて実施する場合のメリット・デメリットについてみていきましょう。
4. パワハラ防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることができる。
- 階層ごとの課題を解決することができる。
- 階層に適した内容を構築することができる。
- 話し合いがしやすい。
- 同じ立場の人の意見を聴くことができる。
- チームワーク力が強まる。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、受講する人の学びを深めるメリットが多いことが分かります。
では、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するデメリットについても見てみましょう。デメリットは以下の通りです。
- 各階層ごとに研修資料を準備する必要がある。
- 階層ごとの日程や会場の設定をする必要がある。
- 他の立場の人の意見を聴くことができない。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、主催者側へのデメリットはあるものの、受講者側がパワハラ(パワーハラスメント)について学ぶ上でのデメリットは多くはありません。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合と階層ごとに実施する場合のメリット・デメリットについて学んできましたが、それぞれのケースでメリット・デメリットがあることが分かりました。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合のプログラムについて学んでいきましょう。
5. 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
■ 全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修のプログラム
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を全従業員向けに実施する場合は、先述したようにメリット・デメリットがあります。職場で働く人全てが同じ情報を共有できることは望ましい一方、立場により学ぶ課題が異なることから全従業員が統一した内容を学ぶことの限界もあることは事実です。
では、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修では、どのようなプログラムで実施することが望ましいのでしょうか。全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶことは大きく分けて以下の3要素になります。
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義
- パワハラ(パワーハラスメント)の類型と種類
- パワハラ(パワーハラスメント)防止対策
このように大きく分けて3つの要素をプログラムに盛り込むことで、パワハラ(パワーハラスメント)の基礎知識が身に付きます。職場で働く人が統一した意識を醸成することで、パワハラ(パワーハラスメント)に該当するような言動が職場では望ましくないことを理解し、パワハラ(パワーハラスメント)の防止につなげることが可能となります。
では、次に、全従業員向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ「パワハラ(パワーハラスメント)の類型と種類」について詳しくみてまいりましょう。
6. 職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の6類型
■ 職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の6類型とは
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
■ 職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の6類型は「例示列挙」
パワハラ(パワーハラスメント)の6類型は、「限定列挙」ではなく、「例示列挙」です。つまり、パワハラ(パワーハラスメント)として問題となる行為は、この6類型だけに限られません。これら以外の言動もパワハラ(パワーハラスメント)に該当する可能性があります。
■ 職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の判断
職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の判断は、この6類型をパワハラ(パワーハラスメント)の典型類型と位置付けて、これらに限らず、職場において問題行動となり得る言動とは何かを検討していくことが必要です。
7. パワハラ(パワーハラスメント)「身体的な攻撃」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「身体的な攻撃」の該当すると考えられる例
- 人格を否定するような発言をすること。
- 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
- 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
- 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛に送信すること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「身体的な攻撃」の該当しないと考えられる例
- 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意すること。
- その企業の業務の内容や性質等に照らして、重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意すること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「身体的な攻撃」の考え方
業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできません。
8. パワハラ(パワーハラスメント)「精神的な攻撃」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「精神的な攻撃」の該当すると考えられる例
- 打撲、足蹴りを行うこと。
- 相手に物を投げつけること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「精神的な攻撃」の該当しないと考えられる例
- 誤ってぶるかること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「精神的な攻撃」の考え方
業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲を超えるものと考えられます。
9. パワハラ(パワーハラスメント)「人間関係からの切り離し」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「人間関係からの切り離し」の該当すると考えられる例
- 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修をさせたりすること。
- 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「人間関係からの切り離し」の該当しないと考えられる例
- 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
- 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「人間関係からの切り離し」の考え方
業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲を超えるものと考えられます。
10. パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」の該当すると考えられる例
- 長時間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
- 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
- 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」の該当しないと考えられる例
- 労働者を育成するために現状より少し高いレベルの業務を任せること。
- 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」の考え方
業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。
11. パワハラ(パワーハラスメント)「過小な要求」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過小な要求」の該当すると考えられる例
- 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
- 気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過小な要求」の該当しないと考えられる例
- 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」の考え方
業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。
12. パワハラ(パワーハラスメント)「個の侵害」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)「個の侵害」の該当すると考えられる例
- 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
- 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「個の侵害」の該当しないと考えられる例
- 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
- 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。
■ パワハラ(パワーハラスメント)「過大な要求」の考え方
業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられるます。したがって、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうか等をふまえて判断することが望ましくなります。
13. まとめ
今回のコラムでは、「全従業員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラの類型と種類」について学んできました。パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施することは義務ではなく、あくまでも努力義務ではあるものの、組織でパワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策としては重要な位置づけであることに変わりはありません。
ただ、目的がはっきりしないまま、ただなんとなくパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を毎年実施する、という感覚であれば、組織におけるパワハラ(パワーハラスメント)を防止する観点からの有効性は低くなります。働く人々の時間や組織のコストを無駄なものにしないためにも、組織の現状を把握し、分析し、そして何を学ぶことでパワハラ(パワーハラスメント)の発生を防ぐことができるか考えた上で、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ内容を決めることが大切です。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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