Column – 29
パワハラ防止研修お役立ちマニュアル
~一般職向けパワハラ防止研修で学ぶ重要なポイント~
パワハラ(パワーハラスメント)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワハラ(パワーハラスメント)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」正しい理解をしている人は世の中にどれくらいいるのでしょうか。さて、前回は、「新入社員向けパワハラ防止研修で学ぶパワハラ回避対策」ついて一緒に学びました。今回は、「一般職向けパワハラ防止研修で学ぶ重要なポイント」について見てまいりましょう。
【目次】
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
- パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
- 日本の社会で起きているパワハラ(パワーハラスメント)に起因する一般職に関する問題点
- 一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ重要なポイント
- まとめ
1. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の位置付け
職場で、パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として講じられているのが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修です。2022年4月までに日本全国にある全ての事業主対してパワハラを防止するための対策を講じることが義務付けられましたので、今までパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施していなかった組織でも、初めてパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施しています。
ただし、以前のコラムでも書きましたが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の実施は「義務」ではありません。あくまでも、パワハラ(パワーハラスメント)の防止対策の1つとして、取組むことが望ましいとされています。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修以外では、「ポスターの掲示」、「社内システムでの啓蒙」、「パワハラに関する冊子の配布」、「パワハラに関する勉強会」等、さまざまな取組があります。このような対策を講ずれば必ずパワハラ(パワーハラスメント)が防げるか、というと必ずしもそうではないのですが、働く人がパワハラ(パワーハラスメント)に関する意識を高めるためには重要な取組となります。
パワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策として「ポスターの掲示」や「パワハラに関する冊子の配布」は、1回の対応で完了し、後は働く人たちにポスターや冊子を見るか、見ないか、を委ねることができますが、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する場合は準備することが多くなります。
特に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で何を受講者へ伝えることがパワハラ(パワーハラスメント)を防止する上で重要か、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施する際の担当者の頭を悩ませます。また、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を受講する階層によっても学ぶことが異なることから、各階層に向けた望ましいプログラムについて慎重に検討することが必要になります。
では、次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」から見てまいりましょう。
2. パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」とは、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を誰が受けるか、について決めることです。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、大きく分けて次のようなグループの中で選定することができます。
- 労働者全員(全ての雇用関係含)
- 新入社員
- 一般職
- 管理職
- 役員
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修の「受講者の選定」にあたっては、これらのグループに分けることができますが、労働者全員と各階層に分かれて実施するのはどちらがよいのでしょうか。
まず、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して実施することのメリットとデメリットをみてみましょう。
3. パワハラ防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「労働者全員で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットは以下の通りです。
- 全ての労働者に同じ情報を伝えることができる。
- 選定する必要がないので楽である。
- 準備する資料が1種類なので手間が省ける。
- 労働者間での意識が統一される。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するデメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることが難しい場合がある。
- 階層ごとに異なる課題への解決が難しい。
- 立場の弱い人たちが委縮してしまう。
- 話し合いがしずらい。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員が一堂に会して受講するメリットとデメリットについてみてきましたが、全員で受講することを選択した場合は、受講者にとってのデメリットの方が多くなります。
一方、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を組織で働く人全員で受講する選択をした場合は、主催者側にとってのメリットが多くなることから、受講者にとっての学びを深めるためにはあまり望ましい選択ではありません。
では次に、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層に分けて実施する場合のメリット・デメリットについてみていきましょう。
4. パワハラ防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
■ パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を「各階層で受講するメリット・デメリット」
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するメリットは以下の通りです。
- 自分事として受け止めることができる。
- 階層ごとの課題を解決することができる。
- 階層に適した内容を構築することができる。
- 話し合いがしやすい。
- 同じ立場の人の意見を聴くことができる。
- チームワーク力が強まる。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、受講する人の学びを深めるメリットが多いことが分かります。
では、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を各階層で受講するデメリットについても見てみましょう。デメリットは以下の通りです。
- 各階層ごとに研修資料を準備する必要がある。
- 階層ごとの日程や会場の設定をする必要がある。
- 他の立場の人の意見を聴くことができない。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を階層ごとに実施することは、主催者側へのデメリットはあるものの、受講者側がパワハラ(パワーハラスメント)について学ぶ上でのデメリットは多くはありません。
パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を労働者全員で受講する場合と階層ごとに実施する場合のメリット・デメリットについて学んできましたが、それぞれのケースでメリット・デメリットがあることが分かりました。
では、次に、日本の社会で起きているパワハラ(パワーハラスメント)に起因する一般職に関する問題点について学んでいきましょう。
5. 日本の社会で起きているパワハラに起因する一般職に関する問題点
■ 日本の社会で起きているパワハラ(パワーハラスメント)に起因する問題点
2022年4月までに日本で一人でも働く人を雇用している組織に対しパワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策を講ずることがパワハラ防止法で義務付けられました。そのため、各組織の状況に応じてパワハラ(パワーハラスメント)が起きないような何かしらの取り組みをする必要がありますが、パワハラ(パワーハラスメント)を起因として日本の社会で起きている一般職に関する問題とは何でしょうか。
それは、
なんでもかんでもハラスメントという言葉を使い問題を提起する「ハラスメント・ハラスメント」が多く起きている
ということです。
パワハラ(パワーハラスメント)だけではなく、セクハラ(セクシュアルハラスメント)やマタハラ(マタニティハラスメント)と思われる言動を受けた人は被害を訴えることにより、パワハラ加害者(行為者)をはじめ各種ハラスメントの加害者(行為者)に行為を止めさせ、職場環境を改善させることができるような仕組みが日本の社会では整いつつあります。
このように、パワハラ(パワーハラスメント)等のハラスメントを受けた人が相談しやすいような世の中になることは望ましいことではある一方、パワハラ(パワーハラスメント)や各種ハラスメントに該当しないようなことまでもパワハラ(パワーハラスメント)等の言葉一括りにして問題を提起する傾向があり、日本の社会でも問題になっています。
実際に、パワハラ(パワーハラスメント)の相談窓口に寄せられる相談の中にも、日常業務の中で改善できることは多いのですが、改善するためのコミュニケーションを図ることが難しいことから、「パワハラ(パワーハラスメント)を受けています」という言葉で自分が抱えている問題のSOSを発信していることもあります。
従って、一般職向け研修では、この「ハラスメント・ハラスメント」の問題を解決するような学びを深めることが重要となります。
では、次に「一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ重要なポイント」について学んでいきましょう。
6. 一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ重要なポイント
■ 一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ重要なポイント
先述したように、日本の社会でパワハラ(パワーハラスメント)の問題が増えていることと同時並行して、「ハラスメント・ハラスメント」という、ハラスメントではないことについても何でもかんでもハラスメントという言葉一括りにして自分が抱えている悩みを提起してしまう問題が起きています。従って、この問題を解決するためには、パワハラ(パワーハラスメント)を受けやすい一般職向け研修の中で「ハラスメント・ハラスメント」の問題を起こさないための取り組みをすることが重要となります。
ただし、実際にパワハラ(パワーハラスメント)や各種ハラスメントの被害を受けている人と混在させないように、パワハラ(パワーハラスメント)相談窓口の相談担当者は、「相談者が何に困っているか」を見極め慎重に検討することが求められてきます。
では、一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修の中で「ハラスメント・ハラスメント」の問題を解決するための学びのポイントについてみてまいりましょう。ポイントは以下の通りです。
- パワハラ(パワーハラスメント)の定義を実際のケースに当てはめてみて、自分が職場で受けていることが該当するか現場で判断できる能力を養う
- 上司や先輩から受けた指導や注意に対し、自分がネガティブな感情を抱いた時に、具体的に「どの言葉」が自分を傷つけたか明らかにできるようにする
- 自分を傷つけた具体的な言葉を自分はどうしたいのか自分の考えをまとめられるようにする
- 自分を傷つけた具体的な言葉をどうしたいのかまとめられたら、それを相手に伝える方法を考えて実行する
このように、自分が受けた自分を傷つけた状況について順を追って考えていき、最終的に自分は何に困っていて、この状況をどうしたいのかを明らかにすることが「ハラスメント・ハラスメント」の問題を解決する上でも重要になります。しかし、何かしらの被害を受けている人が冷静に、自分が何に困って自分はこの状況をどうしたのかを伝えることが難しい人がいることも理解することが、パワハラ(パワーハラスメント)相談窓口に寄せられた相談を解決する上でも重要になります。
パワハラ(パワーハラスメント)を組織から撲滅するためには、先ずはパワハラ(パワーハラスメント)を起こす人を生まない取組が重要となりますが、パワハラ(パワーハラスメント)の被害を受けやすい立場の人たちの対応方法についても改善できるような取組を一般職向けパワハラ(パワーハラスメント)防止研修の中に取り入れることで職場の環境改善につなげることができます。
7. まとめ
今回のコラムでは、「一般職向けパワハラ防止研修で学ぶ重要なポイント」について学んできました。パワハラ(パワーハラスメント)防止研修を実施することは義務ではなく、あくまでも努力義務ではあるものの、組織でパワハラ(パワーハラスメント)を防止するための対策としては重要な位置づけであることに変わりはありません。
ただ、目的がはっきりしないまま、ただなんとなくパワハラ(パワーハラスメント)防止研修を毎年実施する、という感覚であれば、組織におけるパワハラ(パワーハラスメント)を防止する観点からの有効性は低くなります。働く人々の時間や組織のコストを無駄なものにしないためにも、組織の現状を把握し、分析し、そして何を学ぶことでパワハラ(パワーハラスメント)の発生を防ぐことができるか考えた上で、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で学ぶ内容を決めることが大切です。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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