Column – 65
パワハラ防止研修お役立ちマニュアル
パワハラ防止研修で学ぶ判例~被害者の問題行動や多忙も慰謝料判決~
パワハラ(パワーハラスメント)、パワハラ加害者(行為者)という言葉を聞かない日はありません。パワハラ(パワーハラスメント)という言葉は2001年に日本で作られた造語ですが、「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」について正しい理解をしている人は多くはありません。それは、パワハラ(パワーハラスメント)にはグレーゾーン(確定診断ができない状態)のケースが多く存在しているからです。このコラムでは、パワハラ(パワーハラスメント)防止研修で「パワハラ(パワーハラスメント)とは何か」について理解を深めることができるパワハラ(パワーハラスメント)裁判事例について解説していきます。
【目次】
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判例の類型
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に影響を与えること
- パワハラ(パワーハラスメント)の裏にある背景
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に見られる言動
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に発展した経緯
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判で採用される証拠
- パワハラ(パワーハラスメント)の民事上の損害賠償責任
- パワハラ(パワーハラスメント)の裁判例~被害者の問題行動や多忙も慰謝料判決~
- まとめ
1. パワハラ(パワーハラスメント)の裁判例の類型
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裁判例の類型
職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の裁判例の類型は、受け手(被害者)が、行為者(加害者)や使用者(事業主)に対して慰謝料等の損害賠償を請求するケースと、使用者がパワハラ(パワーハラスメント)行為者(加害者)に対して懲戒等の処分をしたことに対して、行為者(加害者)が、処分が重すぎるとして処分の無効確認等を求めるケース(処分を争う行為者)による請求との2つに大きく分けることができます。
当コラムでは、パワハラ(パワーハラスメント)について、「損害賠償請求(受け手による請求)」と「処分を争う行為者(加害者)による請求」の裁判事例について解説していきます。
2. パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に影響を与えること
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に影響を与えること
職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)の事案では、受け手(被害者)の置かれている状況がパワハラ(パワーハラスメント)の判断に影響する場合があります。例えば、一般的な社員への厳しい指導よりも新卒社員のように社会人経験に乏しく対応力に限りのある者に対する厳しい指導の方がパワハラ(パワーハラスメント)と判断されやすい傾向にあります。
また、パワハラ(パワーハラスメント)は、役職的に上の立場の者が下の立場の者を見下して、パワハラ(パワーハラスメント)に及んだと思われるケースが多くあります。
このように、パワハラ(パワーハラスメント)事案が判断される上で受けて(被害者)の置かれている状況が大きく影響することを理解しながら判例を読み解くことも大切です。
3. パワハラ(パワーハラスメント)の裏にある背景
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裏にある背景
パワハラ(パワーハラスメント)の事案では、受け手(被害者)側に、行為者(加害者)から厳しい言動を浴びせられる一因(たとえば、何度指導してもミスが繰り返される等)となったと思われる言動がみられることも多くあります。
また、受け手(被害者)が精神的な問題を抱えていて、それに上司が対応しきれずに受け手(被害者)がパワハラ(パワーハラスメント)を受けたと感じてしまったと思われる事案もあります。
このように、パワハラ(パワーハラスメント)には、パワハラ(パワーハラスメント)が起きた背景があり、これを無視して行為者(加害者)を処分するだけでは、事態の根本的な解決にならないこともあります。
裁判だけではなく、社内でパワハラ(パワーハラスメント)が起きた時は、事実確認だけではなく、パワハラ(パワーハラスメント)が起きた背景も丁寧にヒアリングする必要がここにあります。
4. パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に見られる言動
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に見られる言動
どのような言動がパワハラ(パワーハラスメント)に該当するか分からないという人は多くいると思います。裁判例が不法行為にあたると認定した行為者(加害者)の言動(違法といえるパワハラ)について参考にすると、職場で起きている言動がパワハラ(パワーハラスメント)に該当するか、しないかの判断材料に用いることができます。
職場のパワハラ(パワーハラスメント)相談窓口における事実確認の時も受け手(被害者)からは、裁判例などにみられるように「具体的」に聴き取りをすることが重要です。ただ、「人格を否定されました」だけでは、十分な証拠にはなりえず信用性を肯定することも難しくなります。パワハラ(パワーハラスメント)には、受け手(被害者)の「過剰反応」ともみられる事案があり、裁判例でも、受け手(被害者)がパワハラ(パワーハラスメント)と主張した言動は不法行為には当たらないと判断しているケースがありますので参考にしてください。
5. パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に発展した経緯
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裁判に発展した経緯
裁判に至る背景は裁判により異なりますが、管理職や事実調査の担当者らの対応ミスによって、訴訟に発展したと思われるケースがあります。例えば、懇親会の席での管理職から部下へのパワハラ(パワーハラスメント)を社員間の個人的な問題と判断した会社が十分な被害者対応をしなかったために、被害感情が悪化した被害者が退職後に管理職と会社を被告として訴訟提起した事案があります。また、事実確認担当者が被害者に不用意な発言をしたことで被害感情が悪化した事案などもあります。
これとは対象的に、裁判には至ってはいるが、受け手(被害者)からの通報・相談をきっかけとして使用者が事実確認を適切に行い、行為者(加害者)を処分しているケースもあります。これらの使用者の対応は、パワハラ(パワーハラスメント)事案が発生した場合の事実確認や被害者・行為者(加害者)に対する実際の対応例として参考にしてください。
6. パワハラ(パワーハラスメント)の裁判で採用される証拠
■ パワハラ(パワーハラスメント)の裁判で採用される証拠
パワハラ(パワーハラスメント)の訴訟は、客観的証拠が少ないため、下級審と上級審とでパワハラ(パワーハラスメント)の言動があったと認定するかの判断が分かれるケースも多くみられます。組織で事実調査をしたところ、受け手(被害者)が主張する行為者(加害者)の言動があったと認めてよいか迷うこともあります。
裁判所が、どのような証拠に基づいてパワハラ(パワーハラスメント)の言動があったと認定したのか、また、被害者の供述の信用性をどのようにして判断したのかがわかる部分について、裁判例を参考に組織の相談対応としての事実確認をする際の参考にしてください。
7. パワハラ(パワーハラスメント)の民事上の損害賠償責任
■ パワハラ(パワーハラスメント)の民事上の損害賠償責任
パワハラ(パワーハラスメント)行為をした者は、民法上、不法行為責任を負う(民法709条)可能性があり、その場合は、受け手(被害者)の損害に対して賠償する責任が発生します。
一方、会社も、民事上の損害賠償責任が発生します。その構成に「不法行為責任」と「債務不履行責任」の二つが考えられます。
不法行為責任においては、使用者責任(民法715条)が問題になることが多いといえます。特に、パワハラ(パワーハラスメント)の場合は、業務指導の一環としてなされた行為が問題となることが多いと想定されるため、「事業の執行につき」の要件を満たすことが多くなります。その場合、使用者は、損害賠償責任を負い、その損害賠償の範囲は、不法行為責任を負うパワハラ行為者(加害者)本人と同じものです。
もう一つの債務不履行責任とは、企業に配慮義務の違反があるとして、その債務不履行に基づく損害賠償責任(民法415条)を負わせるという考え方になります。安全配慮義務(労働契約法5条)を、パワハラ事案に即して、より具体化した配慮義務ともいえます。同条をさらに進めて、人格的利益(良好な職場環境で働くという利益)が不当に侵害されないよう配慮する義務があるとする考え方です。
8. パワハラ裁判例~被害者の問題行動や多忙も慰謝料判決~
■ パワハラ裁判例~被害者の問題行動や多忙も慰謝料判決~
- 判例のポイント
- 指導する上司が、我慢の「決壊点」を超えてパワハラ(精神的な攻撃)に及び、受け手がうつ病を発症し休職した事例で、行為者と会社の連帯責任(慰謝料等約165万円)を認めた判例
- 上司の言動は悪質性が高いとはいえず、受け手がうつ病を発症したことには受け手の要因が寄与しているとしつつ、1年以上の休業を余儀なくされ、復職後も通院を継続し、障害等級2級の認定を受けたなどの事情を指摘して、慰謝料額が150万円とされている。
- 上司の無配慮な言動のほか、受け手の側の問題行動、業務多忙などの影響もみられる。
- 事実調査、相談者に対するアフターフォローに関する認定が、相談対応の参考になる。
- 行為者(加害者): D(企画グループの長。Vの上司)・E(内部通報制度の運用を担当するコンプライアンス室の室長)
- 受け手(被害者): V(平成18年4月から平成19年6月までの資料調達部企画グループに所属し、購買予算と実績の管理等を内容とする業務に従事)
- 勤務先: 清涼飲料等の製造販売等を営む会社
- 背景等
- Vは、平成18年4月1日から平成19年6月1日までの間、Dが長を務めた企画グループに配属され、同部署で勤務した(企画グループの所属員はD長およびVを含めて4名。平成19年1月からは5名)。
- 平成18年7月ころ、企画グループとの共同プロジェクトに参加している他の部署から、D長に対し、Vについて、担当している資料作成の納期を守らない、D長からVに指示された作業を他のメンバーに丸投げするなど、勤務態度に問題があるので改善指導をしてほしいとの要望がされた。
- 平成18年11月、D長が上記共同プロジェクトで実施した企画が失敗したことの原因分析を指示した。D長は、Vによる分析結果を不十分なものと判断し、更に検討するように指示したが、同年12月時点において、Vが更なる分析を行っていないと思われたため、Vに対し、早急に同分析に取組むよう指示した。
- 平成18年12月、会社が業務効率化のための新システム開発を決定し、その開発を企画グループが担当することとなった。そしてVが、新システム開発業務を主任として担当することとなった。その際、D長が、Vに対し、平成18年中に、仕事の進め方を整理し、納期を意識した上でスケジュール(タスクリスト)を作成し、D長に提出するように指示した。
- 同年12月13日ころ、VがD長に対し、従前から伝えていたとおり、12月25日から翌年1月4日まで休暇を取りたいと述べた。D長は、休みを取ることを了承したが、他方、Vが翌年1月15日に行われる会議に上記分析資料が必要であるにも関わらず作成を終えていなかったことから、D長が平成18年12月17日から出張する関係で、同月15日までに分析資料を提出するよう指示した。しかし、Vは同日までに分析資料を提出しないまま、同月25日からの休みに入った。
- また、平成18年中に、VからD長に対して上記タスクリストが提出されることもなかった。
- Vは上記分析資料をD長に提出することなく、1月15日の会議において、調達開発部長のT取締役から、分析が不十分であるとの指摘がされた。そこでD長は、Vに対し、更に分析を進めることを指示した。
- しかし、Vは、平成18年1月下旬以降、新システム開発作業に着手して多忙となり(同年2月1日から4月6日までの間でVの終業時刻が午後10時以降となった日数は16日、2月13日から3月14日までの時間外労働日数は労基署の集計によると合計82時間28分)、上記分析については実施されないままで終わった。
- D長の言動
- 平成18年2月、新システム開発作業関連のミーティング(企画グループ員は全員参加において、Vが新システムの開発は無理だと言い出したため、D長は、同ミィーティングの中で、Vに対し、新システム開発に対するVの態度には問題があることを強く指摘するとともに、その態度を改めるよう指導した。
- D長のVに対する指導の頻度は、平成19年1月までの間は月に1、2回程度であった。しかし、同年2月以降は、同年4月5日に控えた新システムの稼働開始に間に合わせる必要があったところ、Vのミスなどにより確認作業に時間を要することなどがあったため、D長のVに対する注意指導の回数が増えたり、その注意指導の程度が多少厳しいものになったりすることもあった。このようなことがあって、Vは、次第にD長から注意を受けること自体が苦痛となり、D長に対して適切な対応さえできなくなり、仕事をやる自信をなくし、V自身が惨めな感じを抱くようになり、精神的に追い詰められていった(平成19年3月ころには、D長がVに注意をすると押し黙ってしまうなど、Vの様子がおかしくなり、D長はこれに気づいた)。
- 上記注意・指導の際に、D長は、「新入社員以下だ。もう任せられない」、「何で分からない。おまえは馬鹿」などと発言した。
- Vは、平成19年4月、心療内科の診察を受けたところ、うつ病に罹患しており3ヵ月の自宅療養を要するとの診断を受けた。
- 同年4月12日、Vは、D長に診断書を提出し、休職を願い出た。これに対し、D長は、3ヵ月の休養については有給休暇で消化してほしいこと、Vは隣の部署に異動する予定であるが、3ヵ月の休みを取るならば異動の話しは白紙に戻さざるを得ず、D長の下で仕事を続けることになること、4月16日までに異動ができるかどうかの返答をするように告げた。
- 4月16日、Vは、D長に対し、電話で他部署に異動することを希望する旨を伝えた。
- 5月7日、Vが職場に復帰し、D長の部下としての勤務を再開した。同日、Vは、D長に対し、主治医からは残業を控えるように言われているので配慮してほしい旨を伝えた。これを受けてD長は、6月1日の異動に向けた引継ぎの準備や集計作業などの比較的簡単な作業のみをVに行わせることにした。
- 同年5月、同年4月上旬ころにD長が依頼しVも了解していた会社開催予定のパーティの手伝いについて、パーティの1週間ほど前に、VがD長に対し、主治医のアドバイスにより他の人に変わってもらいたいと伝え、D長はVを手伝いから外し、Vに代えて他の物を補充した(VはD長からかなり不満顔でいろいろ言われたと主張した)。
- Vは、平成19年6月1日付で包材部に配属となり、同部での勤務を開始したものの、同年7月頃以降、有給休暇を取得するなどした上で、その後、平成20年8月まで休職した。
- Vは、平成21年9月に、障害等級2級(日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの)と認定され、精神障碍者保健福祉手帳の交付を受けた。
- Vによる通報と会社の対応
- 平成23年6月ころ、Vが、内部通報制度を利用してD長からパワハラを受けたとの内部通報を行い、D長に対する責任追及と再発防止策の検討を求めた。
- E室長は、上記内部通報を受けて事実調査を開始し、Vとの間で、同年6月から9月までの間に、3回の面談を含む合計6回の面談とメールのやり取りを行った。
- E室長は、平成23年7月13日から8月1日まで、VとD長の周囲で勤務していた5人の関係者に対して、D長とVの当時のやり取り等を面談またはメールにて事情聴取した。D長の指導に関して非常に厳しすぎるものであるという関係者の証言が出た。
- E室長は、平成23年8月11日と26日にD長と面談し、VがD長に診断書を提出したにもかかわらず、D長から異動か休職かの二者択一を迫られたと主張していることなどを伝え、Vに対する当時の注意指導の在り方等省みさせた。D長は、この面談において、Vに対して厳しく注意指導したのは確かであり、大きな声を出すなど注意指導の方法に行き過ぎの部分をあったことを最終的に認めて反省するとともに、Vが診断書を提出して休みを求めた時点で人事部に相談を持ち掛けるなどの対応をしておく方がよかったと反省した。
- 上記調査後、E室長は、同年8月から9月にかけてのVとの複数回の面談で、D長および第三者からの事情聴取の結果として、D長がVに対する指導が厳しかったり度を越えていたりしたことがあったことを認めたこと、D長から反省の弁が出たことなどを伝え、現時点での事情聴取から得られた判断材料では、D長に明確な悪意があって、D長がVに対してVをつぐしてやろう、いじめてやろうなどという意図で行った行為は見つかっていないこと、そうである以上、現時点ではVが望むD長に対する会社としての処罰ということにはならないこと、D長の行為が会社の内部基準に照らせば、パワーハラスメントにあたらないこと等を口頭で伝えた。
- Vによる提訴
- Vが、D長・E室長および会社を被告として、D長のパワハラにより休職を余儀なくされ、E室長が適切な対応をとらなかったと主張して、損害賠償請求訴訟を提起した。
- 判決の概要
- 東京高裁は、次のとおり判決した。
- ①②についてD長の不法行為責任を肯定して、165万円(慰謝料150万円+弁護士費用15万円)の支払いを命じ、会社の使用者責任も肯定した(連帯責任)。
- E室長については、不法行為責任を否定した。
- 判決の理由
- D長が不法行為責任を負うかについて
- は、Vが納期を守らないことに関しVを注意・指導する中で行われたものであるが、「新入社員以下だ。もう任せられない。」という発言はVに対して屈辱を与え心理的負担を過度に加える行為であり、「何で分からない。おまえは馬鹿」という言動はVの名誉感情をいたずらに害する行為であり、D長の言動は、Vに対する注意または指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くと評価せざるを得ないから、不法行為を構成する。
- は、部下であるVがうつ病に罹患したことを認識したにもかかわらず、Vの休職の申出を阻害する結果を生じさせるものであり、上司の立場にある者として、部下であるVの心身に対する配慮を欠く言動として、不法行為を構成する。
- は、D長がVに対して具体的にどのような言動を行ったかを認めるに足りる証拠はなく、D長がかなり不満顔であったとすることについては、Vの主観によって判断されるものであることなどから、平成19年5月以降も、D長がVに対して不法行為を行ったとするVの主張は認められない。
- E室長の言動が不法行為を構成するかについて
- Vの主張は、E室長が調査と調査結果に基づく対応を怠り、調査結果や判断過程等の文書による開示を拒否し、D長の言動がパワハラに該当しないことが所与のものであるかのような態度をとり続けて、本件のもに消しを図ったというものである。
- E室長はV・D長の双方に事情を聞くとともに、複数の関係者に対して当時の状況を確認するなどして適切な調査を行ったといえる。
- 会社においては通報・相談内容および調査過程で得られた個人情報やプライバシー情報を正当な事由なく開示してはならないとされていることから、調査結果や判断過程等の開示を文書でしなかったことには合理性があり、しかも、E室長は、Vに対し、調査内容等を示しながら、口頭でD長の行為がパワーハラスメントに当たらないとの判断を示すなどしているから、E室長の言動に違法があったということはできない。
- E室長が本件のもみ消しを図ったことは認められない。
- 慰謝料に関して
- 東京高裁は、Vがうつ病を発症して1年以上の休業を余儀なくされ、復職後も通院を継続し、障害等級2級の認定を受けるなど、精神的不調が続いていると結果の重大性を指摘したうえで、他方で、D1の言動は「部下に対する業務に関する叱責の行き過ぎや、精神的不調を訴える部下への対応が不適切であったというものにとどまり、悪質性が高いとはいえず」、Vがうつ病を発症し精神的不調が続いていることについてはVの素因(コミュニケーション能力の乏しさというVの病前の性格傾向)が寄与している面が大きいことなどをあげて、慰謝料額を150万円とした。
9. まとめ
今回のコラムでは、パワハラ(パワーハラスメント)の裁判について詳しく解説してまいりました。組織のパワハラ(パワーハラスメント)相談窓口に寄せられた相談の初動対応を間違えると被害感情が悪化して裁判に至るケースも多くあります。パワハラ(パワーハラスメント)が起きた背景は事案により異なりますが、受け手(被害者)の心情に配慮しながら、パワハラ裁判事例を参考にしつつ、慎重に対応をすることが求められます。
近時は、パワハラ(パワーハラスメント)の事案が増えており、最悪のケースになると命を失う人も出てきます。パワハラ(パワーハラスメント)は企業と個人の存立に多大なる影響を及ぼすリスクの高い経営課題であると認識し、パワハラ裁判に至ることがないよう企業も従業員も尽力することが重要です。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワーハラスメント(パワハラ)加害者(行為者)更生支援研修、パワーハラスメント(パワハラ)防止研修をはじめ、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。
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