パワハラ裁判例~行為者の降格処分提訴は請求棄却~
パワハラ裁判例~行為者の降格処分提訴は請求棄却~
パワハラ裁判例~行為者の降格処分提訴は請求棄却~
- 判例のポイント
- 部下7名に対する悪質なパワハラが認められたため、降格の懲戒処分を受けたところ、行為者が懲戒処分を争って提訴した事案で、請求棄却した判例。
- 裁判所が「極めて悪質」と評した暴君型のパワハラ言動が確認できる。
- 受け手が7名いたにも関わらず相談窓口への申告がなく、コンプライアンスアンケートが発覚の端緒となった事例であり、アンケートの有用性がうかがえ、また、アンケートによる発覚後の会社の対応が参考になる。
- 行為者(加害者): D部長(理事(8等級)、担当役員補佐兼流通営業部長)と常務
- 受け手(被害者): Vら7名(D部長の部下)
※受け手の中にはカウンセリングを継続的に受ける状況に陥った者もいる
- V1に対するD部長の言動
- 「12月末までに2000万やらなければ会社を辞めると一筆書け」「体をこわしても8か月しか給料がでないから体をこわしてからでは遅いぞ、もう大阪に帰って就職したほうが良いんじゃないの」「会社に泣きついていすわりたい気持ちはわかるが迷惑なんだ」「だめなら退職の手続きだな、これは時間がかかるけど。パワハラで訴えるか」等と言った。
- D部長と常務がV1を個人面談し、「・・・さっさと大阪に帰って欲しいんだよ。うちの会社にとってもマイナスだから、ここにいること自体が」「いや、頑張るんじゃなくて、じゃ、お前大阪返してやるから、できなかったら辞めろよ!(強い口調)」等と言って、「今期2000万円やります。・・・できなかったら辞めます。」と書かせた。
- D部長がV1を個人面談し、「(V1の子供の年齢が10歳であると確認し)それくらいだったらもう分かるだろう、おまえのこの成績表見せるといかに駄目な父親か」
- V2に対するD部長の言動
- D部長と常務がV2を個人面談し、「2800万円できなければ、身を引きます」という文書を書かせた。
- V2の成績が上がらないため、約束文書に基づいて会社を辞めるよう要求した。
- V3に対するD部長の言動
- D部長と常務がV3を個人面談し、家族構成、配偶者の収入について質問し、更に、自分の成績につき、あなたが社長だったらどうするか、独立する気があるのかという質問をした。
- 会社の対応等
- 管理職を集めて意見を聴いて調査を開始し、パワハラを受けた・見たと回答した従業員に事情聴取を実施した。
- さらに、事情聴取で名前の出た従業員にも事情聴取したところ、ほぼ全員がD部長と常務の名前をあげた。
- そこで、D部長と常務の事情聴取を実施した。
- 賞罰委員会を開き、パワハラに該当すると資料されるD部長の言動を記載した「弁明の機会の通知」をD部長に交付し、これに対してD部長は回答書を提出し、賞罰委員会に出席して口頭で説明した。
- 会社は、D部長を副理事(7等級)、担当部長に降格する懲戒処分を実施した。
- 常務に対しては、執行役員の地位を解任のうえ、出勤停止2週間の懲戒処分とした。
従業員全員に対してコンプライアンスアンケートを実施したところ、多数のパワハラの指摘があり、発覚した。そこで、
- D部長の提訴
- D部長は、懲戒処分としての降格処分が違法・無効であるとして、無効の確認を求めて提訴した。
- 判決の概要
- 東京地裁はD部長の請求を棄却した。
- 判決の理由
- D部長の言動は懲戒事由に該当するパワハラである。
- D部長の言動は、部下である数多くの従業員に対して、長期間にわたり継続的に行ったパワハラである。成果の挙がらない従業員らに対して、適切な教育的指導を施すのではなく、単にその結果をもって従業員らの能力等を否定し、それどころか、退職を強要しこれを執拗に迫ったものであって、極めて悪質であり、降格処分は相当である。
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