パワハラ裁判例~パワハラによる鬱病と自殺を労災認定~

パワハラ裁判例~パワハラによる鬱病と自殺を労災認定~

パワハラ裁判例~パワハラによる鬱病と自殺を労災認定~

  • 判例のポイント
    • 労災認定に関する事案(パワハラや長時間労働による鬱病疾患と自殺を労災認定した)。  

    • 暴君型の上司の言動が、違法なパワハラにあたると認定されている。  


  • 行為者(加害者): D(課長)

  • 受け手(被害者): V(工業高校卒で入社後現場技術職だったが、入社約16年目にデスクワーク中心の業務に異動し、入社約18年で主任に昇格)


  • 背景等
    • D課長は、現場経験が豊富で業務に精通していたが、日頃から大声、きつい口調であり、他の課員に聞こえる状況で課員を指導することがあり、自分の思うように動かない課員に対して特に厳しく対応し、好き嫌いで始動時の口調に強弱があると受け取る課員もいた。  

    • D課長から厳しく指導され、口問答の末、他の課への転出を希望し、不眠等で軽い鬱病と診断され投薬治療を受けた副長がいた。  

    • D課長は、Vを、他の主任に比べ、仕事が遅く、動きが悪いと評価していた。  


  • D課長の言動
    1. Vの主任昇格に際し、主任としての心構えの書面の作成・提出を命じ、書き直しまで命じてVが能力において不足することを明記させ、昇格後の担当業務につき全面的に責任を負う内容の文章を作成させた。

    2. D課長が、Vに対し、他の課員にも聞こえる場で「君は主任失格だ」「おまえなんか、いてもいなくても同じだ」と叱責することがあった。このような発言は、1回的なものではなく、主任昇格後からVの死亡直前まで継続して行われていた。

    3. D課長が、結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の見解に基づいて、Vに対してのみ、結婚指輪を外すよう命じた。これも1回的なものではなく、主任昇格後からVの死亡直前まで複数回命じていた。Vは特に不快感は表明しなかった。  

    4. Vの業務が量的・内容的に過大になり、上司等の支援協力体制も不十分で、時間外・休日労働の時間が、8月約86時間半、9月約94時間、10月約117時間、11月(7日分)約40時間に及んだ。  


  • Vの自殺
    • Vは、9月下旬にうつ病に罹患したことが明らかな状態となり(うつ病の診断はない)、11月8日6時に自家用車で自宅を出るも、途中で休暇を取る旨連絡して欠勤し、同日午後1時半ころ、社内でガソリンをまいて焼身自殺した。


  • 遺族による提訴
    • Vの妻が遺族補償年金等の支給請求をしたのに対し、労基署長が、Aの死亡は業務に起因するものではないとして不支給処分としたため、妻がその取消を求めて提訴した。


  • 判決の概要 
    • 名古屋高裁は、①~④による心理的負担が社会通念上、うつ病を発生させるに足りる危険性を有するものであったと認められるから、Vの業務とうつ病の発症との間には相当因果関係が認められ、うつ病発症と自殺との間の相当因果関係も認められるとして、労基署長による不支給処分を取り消した。


  • 判決の理由
    • 言動②は、指導の範疇をこえた感情的な叱責であって、他の課員にも聞こえる場でこのような叱責が行われるのであれば、その指導は人格の否定とも見るべきである。  

    • 言動①②③は、何ら合理的理由のない、単なる激しい指導の範疇を超えた、いわゆるパワーハラスメントとも評価されるものである。  

    • 言動③について、Vが明白に不快感を表現しなかったからといって、心理的負荷が軽いとは判断することができないことは言うまでもない。  

    • ④について、仕事量・内容の大きな変化による長時間労働がうつ病発症・進行の大きな原因となったと考えられる。  



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