パワハラ裁判例~自殺した遺族の請求を棄却した事案~

パワハラ裁判例~自殺した遺族の請求を棄却した事案~

パワハラ裁判例~自殺した遺族の請求を棄却した事案~

  • 判例のポイント
    • 不正経理を継続していた自殺した被害者に対する上司の叱責について、原審(地裁)では認められていた上司の不法行為と会社の安全配慮義務違反を否定して、遺族の請求を棄却した事案


  • 行為者(加害者): D(S支店工務部長)

  • 受け手(被害者): V(S支店T営業所長)

  • 背景等
    • Vは、T営業所長に就任した平成15年4月直後から、部下に命じて、VがS支店に報告していた実施計画に近い数字になるように架空出来高の計上等の不正経理を開始した。   

    • Vは、不正経理開始後約1か月で架空出来高の計上に気づいた上司から是正指示を受けた後も、これを是正することなく漫然と不正経理を続け、平成16年初めころには架空出来高を是正したと報告していたが、実際には是正されておらず、平成16年7月に、架空出来高が約1800万円計上されていることが発覚した。  

    • このため、D部長が、Vに対し、「去年もやっていて注意していたのに、何をやっているんだ」と注意し、Vとその部下のC係長に対し、毎朝日報を書いて報告するよう指導し、D部長が日報を確認して指導した。  


  • D部長の言動
    • 平成16年9月9日、日報報告の際に、D部長が、Vに対し、「この成績は何だ。これだけしかやっていないのか。」と叱責した。

    • 平成16年9月10日の業績検討会では、D部長がVに対し、「T営業所には1800万から2000万近い借金があるんだぞ。」「達成もできない返済計画を作っても業績検討会などにはならない。」、「現時点で既に1800万円の過剰計上の操作をしているのに過剰計上が解消できるのか。出来るわけがなかろうが。」、「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にはならないぞ。」と叱責した。また、「ここの営業所全員が力を併せていかないと、返せんのだから、無理な数字じゃないから、このいぐらいの額だから、今年は皆辛抱の年にして返していこうや。」「全員が力を併せて返していかんと返せんのだから、皆が力を併せて頑張ってやろうや。」と、T営業所の従業員全員を鼓舞した。  


  • Vの自殺
    • 平成16年9月13日、VはT営業所にて自殺した。遺書には、「怒られるのも 言い訳するのも つかれました。自分の能力のなさに呆れました。・・・(部下に)力のない上司で申し訳ない。」等と記載されていた。 

  • Vの遺族による提訴
    • Vの妻と子は、過剰なノルマ達成の強要や執拗な叱責を受けたことなどにより、Vが心理的負荷を受けてうつ病を発症し、または憎悪させて自殺したと主張して、安全配慮義務違反または不法行為責任による損害賠償請求をして、提訴した。


  • 判決の概要
    • 原審(松山地判 平20.7.1)は、約1800万円の架空出来高を遅くとも平成16年度末までに解消することを目標とする事業改善の指導とD部長の叱責は、過剰なノルマ達成の強要・執拗な叱責として不法行為が成立し、会社の安全配慮義務違反も認められる等として、合計約3100万円の損害賠償を命じた。

    • 高松高裁は、D部長らの不法行為の成立を否定するとともに、会社の安全配慮義務違反の成立も否定し、遺族の請求を棄却した。  


  • 判決の理由
    • D部長らからの約1800万円の架空出来高を遅くとも平成16年度末までに解消することを目標とする事業改善の指導は、T営業所を取り巻く業務環境に照らすと、必ずしも達成が容易な目標であったとは言い難く、さらに、D部長のVに対する工事日報の報告と確認・指導の際における強い叱責は認められる。しかし、上司から架空出来高の計上等の是正を図るように指示がされたにもかかわらず、それから1年以上が経過した時点においてもその是正がされていなかったことや、T営業所において必要な工事日報が作成されていなかったことなどを考慮に入れると、上司らが、Vに対して、不正経理の継承や工事日報の作成についてある程度の厳しい改善指導をすることは、上司らのなすべき正当な業務の範囲内にあるものというべきであり、社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えた過剰なノルマ達成の強要や執拗な叱責に該当するとは認められない(不法行為に当たらない)。

    • D部長らの行為は不法行為に当たらず、会社にはメンタルヘルス対策の欠如等も認められないから、会社の安全配慮義務違反も認められない。



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