パワハラ裁判例~罰ゲームを不法行為認定し損賠賠償命令~

パワハラ裁判例~罰ゲームを不法行為認定し損賠賠償命令~

パワハラ裁判例~罰ゲームを不法行為認定し損賠賠償命令~

  • 判例のポイント
    • 罰ゲームによるコスチューム着用指示等が不法行為にあたるとして、行為者と会社に対して、慰謝料等22万円の損害賠償を命じた判例

  • 行為者(加害者): D1(課長)、D2(係長)、D3(主任):化粧品販売会社に出向して勤務するVの上司

  • 受け手(被害者): V(当該会社に出向してビューティーカウンセラーとして勤務)

  • D1らの言動
    • D1・D2・D3を含む7名(うち6名は女性)で構成されるリーダー会議は、拡販コンクールで商品販売数が目標数に達しなかった(未達)Vら4名の罰ゲームを行うことを決定し、平成21年10月末に実施された会社業務としての研修会に先立ち、D2係長らがVら未達者4名を呼び出して、罰ゲームとして、用意していたコスチュームを選ばせて着用させた。 

    • コスチュームはピンク色を黒で縁取りしたウサギの耳の形のカチューシャ、上半身は白い襦袢の上に紫の小袖と光沢のある青色の肩衣、下半身は光沢のある黄色の袴であった。Vは拒否をしなかったが、着用についての意思確認はなかった。  

    • Vは、研修会当日は、勤務時間・休憩時間を含めて終日着用し、予定されていた発表もした。  

    • 平成21年11月、他の研修会でコスチュームを着用したVの姿を含む研修会の様子がVの了承を得ずにスライド投影された(Vは投影をやめるように抗議しなかった)。  

    • 平成21年11月末、Vはクリニックに月1回から2回程度通院するようになり(愁訴には、本件だけでなくその他の会社のVに対する対応への不満も含まれている)、同年12月1日以降、年次有給休暇、有給病気休暇、欠勤を経て、平成22年5月末付けで雇用期間が満了した。  


  • Vの申立と会社の対応
    • 平成22年4月、Vは大分県労働委員会にあっせんを申請し、パワハラ行為について会社として責任をとることと、行為者の処分等を求めた。  

    • その後、会社は、支店長を減給処分・転勤、D1課長を減給処分・降格処分、D3主任を転勤とした。  


  • Vによる提訴
    • Vは、D1課長・D2係長・D3主任および会社に対して319万円の損害賠償を請求して提訴した。

  • 判決の概要
    • 大分地裁は、D1・D2・D3の不法行為責任を認め、D1らと会社に対して、損害賠償責任として22万円(慰謝料20万円+弁護士費用2万円)の支払いを命じた(連帯責任)。


  • 判決の理由
    • (D1らの行為が不法行為に当たるかについて)コスチューム着用の目的はレクリエーションや盛り上げ策であり、目的そのものには妥当性が認められる。また、Vがコスチューム着用を明示的に拒否していない。しかし、Vらは研修会の出席が義務付けられており、その際にコスチューム着用が予定されていながら、Vの意思を確認することもなされずD1らが、職務上の立場に基づき、コスチューム着用を求めたものであり、たとえ任意であったことを前提としても、Vがその場でこれを拒否することは非常に困難であった。さらに、コスチューム着用は会社の業務内容や研修会の趣旨と全く関係なく、しかも別の研修会でVの了解なくスライドが投影されており、採用された手段が目的と必ずしも合致しているものとはいえない。したがって、研修会が1日であったこと、目的が正当なものであること、Vが明示的に拒否していないことなどを考慮しても、D1らの行為は、社会通念上正当な職務行為であるとはいえず、Vに心理的負荷を過度に負わせる行為であるといわざるを得ず、違法性を有し、不法行為に該当する。

  • 損害額について
    • 事実経過に照らせば、Vにおいて、コスチューム着用とスライド投影等によって精神的苦痛を感じていたことが認められるとしつつ、他方で、クリニックへの愁訴にはD1らの行為以外の会社のVに対する対応への不満も含まれていることなどを考慮し、D1らの行為によってVがコスチューム着用したことと相当因果関係にあるVの精神的苦痛は、20万円と同程度が相当と認められる。  

    • 会社は使用者責任(民法715条)を負う。  



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