パワハラ裁判例~メールの執拗な叱責は不法行為と認定~

パワハラ裁判例~メールの執拗な叱責は不法行為と認定~

パワハラ裁判例~メールの執拗な叱責は不法行為と認定~

  • 判例のポイント
    • 上司の部下に対するメールによる執拗な叱責(精神的な攻撃)が不法行為にあたると認定し、行為者に対して慰謝料等約20万円の支払いを命じた判例。

  • 行為者(加害者): D1(神経生理学口座の主任教授)、D2(同講座の准教授)

  • 受け手(被害者): V1(准教授。昭和54年から平成19年3月まで細胞生理学口座に在籍し、D1教授の誘いを受けて、平成19年4月から神経生理学講座に移籍したが、平成20年3月に退職した。)

  • 背景等
    • 当大学の細胞性学講座には、平成3年からV1の妻V2が助教として在籍し、10年以上にわたって共同研究を行っていた。  

    • 平成19年4月に神経生理学講座に移籍したV1准教授は、D1教授の了解を得て共同研究を継続していたところ、平成19年6月ころ、D2准教授の了解を得ずに、D2准教授から新たな実験を提案されて提供されていた酵母(自然界には存在しない改変酵母)を用いて、共同研究で予備実験を行った。共同実験の結果をV2助教のグラント申請に使うことになったことを知ったD2准教授は、憤慨し、D1教授を通じて、V2助教が在籍していた細胞生理学講座の教授に対し、酵母の無断使用に関する連絡を行い、V2助教からメールで謝罪を受けた。  

    • V2助教は、V1准教授の移籍後、神経生理学講座のV1准教授の居室に頻繁に出入りするようになり、神経生理学講座の旧知の助教から、夫婦が同じ教室で一緒に仕事するについては十分に気を使わないと周りの人が不快な思いをする旨を告げられた。このためV2助教は、神経生理学講座の研究室への出入りを控えるようにした。  

    • 平成19年8月、V1准教授が食堂の電子レンジで実験用材料を容器に入れて加温したことについて、D2准教授は、V1准教授が遺伝子組換えたんぱく質を使用する研究をしていたことから、遺伝子組換えタンパク質を電子レンジで加熱したものと考えて、V1准教授を注意した。D1教授もメールで同様の指摘をし、電子レンジが買い替えられた。  

    • 平成19年8月、D1教授がV1准教授に対し、メール等により、共同研究は推進されるべきものであるが、公私混同は忌避されるべき等の指摘を繰り返し行った。このため、V1准教授とV2助教は、共同研究が妨げられる状態にあるものと考えた。  

    • 平成19年8月下旬、V1准教授が心療内科を受診し、適応障害によるうつ状態との診断を受け、V2助教も、同年9月12日に心療内科を受診し、適応障害との診断を受けた。  

    • 平成19年9月26日、V1准教授は、選択定年制度により退職することを決意して、大学に退職願を提出し、平成20年3月末付けをもって退職する旨を申し出て、10月19日から約1ヶ月、有給休暇を取得した。  

    • 平成19年11月9日、D1教授は、V1准教授に対し、休暇明けの勤務について、在宅勤務を勧め、「このままでは、今まで以上に教室の雰囲気に悪影響が出てしまうことを強く懸念します。また、単に出勤の規定事実を作るだけに等しい行為は、教室の士気に甚大な弊害をもたらしますので、最悪です。」と記したメールを送信した。  

    • これに対し、V1准教授は、メール返信で、在宅勤務は行わず、D1教授の懸念を尊重し、研究室を利用せずに学内の施設を利用し、実験を行う旨を伝えた。  

    • D1教授、D2准教授およびV1准教授の話し合いが行われたが、D2准教授は、V1准教授が単独で実験を行うことには危険がつきまとうため反対する旨を述べ、D1教授・D2准教授は、V1准教授に対し、D2准教授のもとで実験を行うよう求め、さらに、D1教授は、V1准教授に対し、メールで、今後の勤務形態について、D2准教授の指導のもとで研究室業務に従事するか、在宅勤務とする旨の提案をした。  

    • その後のD1教授らとの話し合いにおいて、V1准教授が、実験は行わずに、V2助教との共同研究の論文をまとめるべく在宅勤務を行う旨を申し出たところ、D2准教授が、実験を行うべきことと、在宅勤務は正式な勤務形態ではないので許可されるべきではなく、病気が原因であれば休職か病欠とすべきである旨を主張した。これに対して、V1准教授は、在宅勤務を希望し、D1教授は、V1准教授の在宅勤務を許可した。  

    • 平成19年11月21日、D1教授は、V1准教授に対し、在宅勤務に伴い、居室を明け渡すよう求め、V1准教授は居室を明け渡した。  

    • V1准教授は、在宅勤務開始後も、学事として学生に対する講義等を行い、V2助教と共同で、神経生理学講座と細胞生理学講座とが共同で運営する実習を担当していた。V1准教授は、実習を受講する学生らのレポートを採点した成績を、当初提出する予定であったR准教授ではなく、V2助教を通じて、生理学実習全体の担当者(講師)に提供したところ、R准教授からの催促を受け、改めてR准教授に提出した。  


  • D1教授・D2准教授による一連のメール
    • 平成19年12月27日、上記採点結果報告の件について、D2准教授が、V1准教授を叱責するメールを、V2助教及びD1教授に出し、以後、平成20年1月4日までの間、D1教授とD2准教授は、V1准教授に対し、相互に呼応しつつ合わせて20件以上のメールを昼夜を分かたず送信した。その内容は、採点結果報告の件についての叱責に端を発しているが、それにとどまらず、V1准教授の一般的な教育研究態度や能力、人格等についてまで非難するもので、その表現も、「私は『教育職』には極めて不適当であると考えます。」「後3ヵ月しかない状況で、しかも在宅勤務という自分勝手な状況を選択しておいて、今更なにが学事に努めるのですか。具体的にどう努めるのですか?」「給料は全額もらって働かず、学生の指導をしているふりをして、迷惑だけをかけるなど身勝手すぎます。」「このような常識も判断できないなら、学生の指導などできないでしょうから今すぐ休職してはどうですか。」等、極めて激しい記述を含むものであった。  

    • V1准教授は、これらに対して、その都度もっぱらD1教授らの言い分を認めて反省の態度を示す内容のメールを10件も返信しているが、D1教授・D2准教授は、なおも上記のような内容のメールの送信を執拗に続けた。そして、D1教授・D2准教授は、以上のメールのほとんどを、CCの参考送信機能を使用するなどして、R准教授らにも同時送信し、また、そのうちの数件については、V2助教にも送信した。  


  • V1・V2による提訴
    • V1・V2は、D1教授らからパワハラを受けたとして、D1・D2らに対し、慰謝料を請求して提訴した。 

  • 判決の概要
    • 東京高裁は、D1教授・D2准教授の一連のメールが不法行為を構成するとして、D1・D2に対し、20万円の損害賠償を命じた(連帯責任)。  


  • 判決の理由
    • D1教授・D2准教授のメールについて、相当程度の精神的苦痛を与儀なくされたものと認められる。発端となった採点結果報告提出の問題は、V2助教も実習に参加していたのだから、V1准教授の行為が大きな非難に値するものとは考えられず、D1教授らが問題とするV1准教授らについてのその他の事件も、それぞれの時点でV1准教授から反省や謝罪が示され、一応の決着がついている問題であって、一連のメールの時点においてそれを蒸し返す必要性や必然性があったことはうかがうことができない。そうすると、一連のメールは、職場の上司や同僚としての指導、監督助言等として社会的に相当といえる限度を逸脱したパワーハラスメントないし嫌がらせというほかはなく、不法行為を構成するものと認められる。  

    • V1准教授は、D1教授らのその他の言動も不法行為に当たると主張していたが、損害賠償責任を認めるほどの違法性があったとまでは評価することができない等として、不法行為を構成するものではないとした。  

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