パワハラ裁判例~社長と会社へ5千万円損害賠償請求~
パワハラ裁判例~社長と会社へ5千万円損害賠償請求~
パワハラ裁判例~社長と会社へ5千万円損害賠償請求~
- 判例のポイント
- 暴君型の社長の暴言、暴行および退職強要のパワハラ(身体的な攻撃・精神的な攻撃)を受けた従業員が自殺した事例で、自殺に対する社長と会長の損害賠償(約5414万円)まで認めている。
- 行為者(加害者): D1(代表取締役社長)、D2(監査役)
- 受け手(被害者): V(金属ほうろう加工に関連する業務に従事し、自殺時は入社約5年で52歳)
- 背景
- Vは、設備や機械を損傷するという事故を含むミスをしばしば起こした。
- D1社長の言動
- D1社長は、Vが仕事でミスをすると、「てめえ、何をやってんだ」、「とうしてくれるんだ」、「ばかやろう」などと汚い言葉で大声で怒鳴っていた。あわせてVの頭を叩くことも時々あったほか、Vを殴ることや蹴ることも複数回あった。
- D1社長は、Vら従業員に対し、同人らがミスによって会社に与えた損害について弁償するように求め、弁償しないのであれば同人らの家族に弁償してもらう旨を言ったり、「会社を辞めたければ7000万円払え。払わないと辞めさせない。」と言ったこともあった。
- 自殺の7日前、D1社長は、Vに対し、大腿部後面を左足および左膝で2回蹴るなどの暴行を加え、全治約12日間を要する両大腿部挫傷の傷害を負わせた。
- 自殺の3日前、D1社長がVに対し、退職願を書くよう強要し、Vは退職届を下書きした。下書きには、「私Vは会社に今までにたくさんの物を壊してしまい損害を与えてしまいました。会社に利益を上げるどころか、逆に余分な出費を重ねてしまい迷惑をお掛けした事を深く反省し、一族で誠意をもって返済します。2か月以内に返済します。」などと記載されていた。
- Vの自殺
- 退職届を下書きしたVは、帰宅して、妻に対し、「もう駄目だ、頑張れない、会社を辞める」などと述べた。その際に、妻がVの両足の後ろ側に大きな黒いあざがあるのを見つけて暴行に気づいた。
- 翌日(自殺2日前)、妻とVは、病院で診断書を取った後、警察署に行き相談した。
- 自殺前日、Vは「仕返しが怖い」と怯え、午後10時ころに仕事から帰宅した後、絨毯に頭を擦り付けながら、「あーっ!ちょっと気晴らしに同僚に会ってくる。」と言って出掛け、翌日午前4時ころ、墓苑内公衆トイレにおいて自殺した。
- Vの遺書には、「(妻)へ ごめん!!オレがいると、みんなに迷惑が掛かるので死ぬしかないと思う。オレ自身借金もあるし、プロミス、アコム、アイフル いろいろお金を使い込んでしまったので支払もたいへんだと思う。会社にも迷惑ばかり、かけて物を壊したり、ミスをおかしてトラブルばかりしているのでこの先、会社へ行って、仕事をしても、また同じ失敗をくり返すだろうと思うし、死んで償いをします。」などと記載されていた。
- Vの遺族による提訴
- Vの妻が労災申請し、労基署長は平成22年に不支給決定をしたが、その後の調査結果を踏まえ、平成24年に不支給決定を取り消して支給決定をした。これを受けて、妻と子が、D1社長・D2監査役と会社に対し損害賠償請求をして、提訴した。
- 判決の概要
- 名古屋地裁は、D1社長の言動の不法行為を認定し、会社の損害賠償責任(会社法350条)を認めて、D1社長と会社に対し、合計約5414万円(Vの逸失利益約2656万円+死亡慰謝料2800万円+弁護士費用等から損益相殺分を控除した額)の支払いを命じた(連帯責任)。なお、D2監査役の不法行為責任は否定した。
- 判決の理由
- D1社長のVに対する暴言、暴行および退職強要のパワハラが認められる。D1社長のVに対する暴言および暴行は、Vの「仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Vを威迫し、激しい不安に陥れるものと認められ、不法行為に当たると評価するのが相当」である。退職強要も不法行為に当たる。
- Vは、仕事においてミスをすることが多くなると、しばしば暴言をし、頭を叩くという暴行をときどき行っており、Vの心理的なストレスとなっていたところ、自殺7日前の暴行は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えるものであり、本件暴行がVに与えた心理的負荷は強いものであったと評価するのが相当である。自殺3日前の退職強要は、その態様および退職届の内容からすれば、Vに与えた心理的負荷が強いものであったと評価するのが相当である。したがって、Vは、従前から相当程度心理的ストレスが蓄積していたところに、自殺7日前の暴行および自殺3日前の退職強要を連続して受けたことにより、心理的ストレスが増加し、急性ストレス反応を発症したと認めるのが相当であり、急性ストレス反応により、自殺するに至ったと認めるのが相当である。
- (原告らはD2監査役が日常的に暴言、暴行をなしたことも主張したが)D2監査役については、原告らの主張自体、D2監査役がVに対し日常的に暴言、暴行をしたことがあるという抽象的なものにすぎない上、関係者の供述もVから聞いたことがある、汚い言葉でヒステリックに叫んでいたことがよくあったというものにすぎないから、D2監査役がVに対し、日常的に暴言や暴行を行っていたということを認めるに足りる証拠はなく、原告らが主張するD2監査役のパワハラを認めることはできない。
- 原告らは年金等として約533万円の支給を受けているので、これを損益相殺した額が約5414万円となる。
n>
Contact Usご相談・お問い合わせ
パワハラ行為者への対応、パワハラ防止にお悩みの人事労務ご担当の方、問題を抱えずにまずは私たちにご相談を。
お電話またはメールフォームにて受付しておりますのでお気軽にご連絡ください。
※複数の方が就業する部署への折り返しのお電話は
「スリーシー メソッド コンサルティング」
でご連絡させていただきますのでご安心ください。
※個人の方からのご依頼は受け付けておりません。
一般社団法人
パワーハラスメント防止協会®
スリーシー メソッド コンサルティング
平日9:00~18:00(土曜日・祝日除く)
TEL : 03-6867-1577
メールでのお問い合わせ・詳しいご相談
はメールフォームから