パワハラ裁判例~後輩の自殺7332万円の損害賠償を認める~

パワハラ裁判例~後輩の自殺7332万円の損害賠償を認める~

パワハラ裁判例~後輩の自殺7332万円の損害賠償を認める~

  • 判例のポイント
    • 閉鎖的な職場における暴君型の先輩隊員による極めて悪質なパワハラ(身体的な攻撃・精神的な攻撃・過大な要求)により、後輩隊員が自殺した事案。  
    • 上司職員及び行為者にとって自殺は予見可能であったとして、使用者に自殺についての慰謝料・逸失利益を含む損害賠償請求が認められた。  
    • 自衛隊職員の事案のため、国家賠償請求等訴訟となっている。  


  • 行為者(加害者): D(Vの先輩である2等海曹)

  • 受け手(被害者): V(2等ないし1等海士。自衛官に任官して初めて乗り組んだ護衛艦で船務科電測員として約1年の勤務後、自殺)

  • 背景
    • Dは、護衛艦Tに船務科電測員として7年以上勤務していた。

    • Dは、Vのみならず他の自衛官への粗暴な行為や暴行などがみられ、艦内に自ら購入した市販のエアガンを持ち込む等の行動もみられた。


  • Dの言動
    1. Vが当該護衛艦に乗り組んで数か月後から、Vに対し、仕事ぶりにいらだちを感じたときや単に機嫌が悪いときに、10回程度以上、平手や拳で顔や頭を殴打したり、足で蹴ったり、関節技をかけるなどの暴行をした。また、Vの自殺直前まで頻繁に、エアガン等を用いてBB弾を撃ちつける暴行を加えた。

    2. Vの自殺の約3ヵ月前ころから、DがVにアダルトビデオを売りつけて、売買代金名下に合計8万円ないし9万円の支払を要求してこれを受領し、さらに、Vの自殺の直前に、アダルトビデオの購入会員の脱会料名目で5,000円の支払いを要求し、これを受領した。Vは分割での代金支払いについて了承を求めるほど経済的にひっ迫したが、Dは給料日後に金員の支払いを強要した。


  • 使用者の対応
    • Vは、Dから暴行を受け始めて1か月程度たったころに分隊長に対してエアガンで撃たれることを申告したが、何らの措置も講じられなかった。  

    • 自殺の約1か月前には、先任海曹に対し、後輩隊員に対する暴行の事実が申告され、先任海曹からDに対してエアガンを持ち帰るよう指導が行われたが、Dによるエアガンの撃ちつけ等の暴行が続いた。  


  • Vの自殺
    • Vは、自殺の約1か月前から、同僚に対し、Dに対する嫌悪感を募らせている様子を見て、自殺の方法を調べて話すようになり、自殺の2日前には、Dを「生まれて初めて殺してやりたいと思った。」とまで話していた。  

    • Vは、護衛艦Tに乗り組んで約1年で自殺した。  

    • Vが自殺時に所持していたノートの中には、Dを絶対に許さない、呪い殺してやるといった、同人への激しい憎悪を示すことがなどが書き連ねられていた。  


  • Vの遺族による提訴
    • Vの遺族である母と姉が、D(民法709条)と国(国賠法1条1項)に対し、損害賠償請求をして提訴した。

  • 判決の概要
    • 横浜地裁は、パワハラと自殺との相当因果関係は否定していた。 

    • 東京高裁は、パワハラと自殺との相当因果関係を肯定し、自殺についての損害賠償責任まで認めて、国に対し、合計約7332万円(Vの逸失利益+Vの死亡慰謝料+Vの葬祭料+遺族の慰謝料+弁護士費用等)の支払いを命じた(国賠事案であるため、Dは責任を負担しない)。


  • 判決の理由
    • Vは、Dから暴行および恐喝を受けることに非常な苦痛を感じ、それが上司職員の指導によって無くなることがなく、今後も同様の暴行および恐喝を受け続けなければならないと考え、自衛官としての将来に希望を失い、生き続けることがつらくなり、自殺を決意し実行するに至ったものと認めることが相当である。  

    • 以下の事実関係のもとにおいては、Dおよび上司職員らは、Vの自殺を予見することが可能であったと認めるのが相当であるから、本件違法行為とVの自殺による死亡との間に相当因果関係があると認めるのが相当である(Vの暴行等に対する精神的苦痛だけでなく、自殺についても損害賠償責任も認められる)。  

    •  

    • 上司職員らにおいては、遅くとも、先任海曹にDの後輩隊員に対する暴行の事実が申告されたとき(Vの自殺の約1か月前)以降、乗員からの事情聴取を行うなどしてDの行状、後輩隊員らが受けている被害の実態等を調査していれば、Vが自殺を決意した日の夜までに、Vが受けた被害の内容と自殺まで考え始めていたVの心身の状況を把握することができたということができる。  

    • Dにおいても、自らVに対して暴行および恐喝を行っていた上、Vと同じ班に所属して業務を行っていたことに照らせば、Vの心身の状況を把握することが容易な状況に置かれていたというべきである。  

    • 国賠事案であるため、Dの個人としての不法行為責任は否定され、国の賠償責任のみが認められる。  



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