パワハラ裁判例~高卒新人自殺の損害賠償が約7260万円~
パワハラ裁判例~高卒新人自殺の損害賠償が約7260万円~
パワハラ裁判例~高卒新人自殺の損害賠償が約7260万円~
- 判例のポイント
- 指導する上司が、我慢の「決壊点」を超えてパワハラ(精神的攻撃)に及び、被害者が自殺した事案で、上司と会社に対して、被害者の精神的苦痛だけでなく、自殺による損害の賠償(約7260万円)まで命じた判例。
- 被害者が高卒新人であったことが、パワハラの判断と自殺に関する損害賠償の判断に影響した。
- 被害者が行為者から言われたことなどを記載していた手帳がパワハラの重要な証拠となった。
- 行為者(加害者): D(リーダー。Vの直属上司)、E(メンテナンス部部長。Vの上司)
- 受け手(被害者): V(高校在学中アルバイトから高校卒業後の平成22年4月に正社員となり、メンテナンス部に配属されて外注先の消防設備等の保守点検業務に従事した。正社員入社後約8か月で自殺。)
- 背景等
- Vには、特異な性格傾向や既往症など、特に問題はなかった。
- Vは、外注先の機器の外回り点検業務を担当し、直属の上司にあたるDが同行して指導していた。
- Dは、Vの仕事の覚えが悪いことから、自分が注意したことは必ず手帳に書いておいてノートに書き写すようにVに指導していた。
- 平成22年7月、Vの仕事上の失敗が多く、Dが運転する車中で居眠りをするなどが重なったため、いらだちを覚えるようになったDが、Vに対し、「一人で勝手に行動しない。分かりもしないのに返事をしない。」と言うようになった。
- 平成22年7月半ばころ、Vは、仕事時間中に母に電話し、「仕事をやめてもいいか」と尋ね、30分ほど、泣きながら話をし、自分ではちゃんとやっているつもりなのに、後で見るとミスをしていて、ペアで作業している人に迷惑がかかり、叱責されたことなどを話した。
- ➀Vの手帳に記載され、判決によりパワハラと認定されたDの言動。平成22年8月ころ以降
- 「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分?」「詐欺と同じ、3万円を泥棒したのと同じ」「毎日同じことを言う身にもなれ」「わがまま」「申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず」
- 「待っていた時間が無駄になった」「聞き違いが多すぎる」「耳が遠いんじゃないか」
- 「嘘をつくような奴に点検をまかせられるわけがない」「点検もしてないのに自分をよく見せようとしている」
- 「人の話をきかずに行動、動くのがのろい」「相手するだけ時間の無駄」
- 「指示が全く聞けない、そんなことを直さないで信用できるか」「何で自分が怒られているのかすら分かっていない」「反省しているふりをしているだけ」「嘘を平気でつく、そんなやつ会社に要るか」「嘘をついたのに悪気もない」
- 「根本的に心を入れ替えれば」「会社辞めたほうが皆のためになるんじゃないか、辞めてもどうせ再就職はできないだろ、自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば、店でも出せば、どうせ働きたくないんだろう」「いつまでも甘々、学生気分はさっさと捨てろ」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」
- 「今日使った無駄な時間を返してくれ」
- ➁Vの遺族が主張したDの言動
- Dは、Vに対し、暴力を振るっていた。
- 遺族が主張したE部長の行為
- Dによるパワーハラスメントの放置、Vの恒常的な長時間労働の放置等。
- Vの自殺
- 平成22年9月には、Vは、Dの言動を真摯に受け止めて、「自分がアホらしい」「辞めればいい、死んでしまえばいい」「少しはDさんの負担も考えてみろよ」などと手帳に書き、葛藤していた。
- 秋ころには、Vは、自宅において笑顔がなくなり、いつも疲れたような難しい顔をするようになった。また、帰宅をしてすぐにソファに横になり、食事もとらず、風呂にも入らないでいることが多くなった。
- 平成22年10月、VはE部長に対し、退職の申し出をした。
- 平成22年11月29日、Vは、ロープを購入し、遺書を残して自宅で縊死(いし)した。
- Vの遺書には、社長やE部長への感謝と謝罪の言葉のほか、Dについては「多分社員の中で一番迷惑をかけてしまいました。直せと言われ続けていたのに、何も変われなくてごめんなさい、とりあえず私はあなたが嫌いです。大嫌いです。でも、言われ続けていたことに嘘はなかったです。」等と書かれていた。
- 遺族による提訴
- Vの父が、VはDとE部長のパワハラや会社による加重な心理的負担を強いる業務体制等により自殺したと主張して、D・Eと会社に対し、連帯して約1億1千万円の損害賠償を請求して提訴した。
- 判決の概要
- 福井地裁は、Dのパワハラを認定し(➀の発言は認定するが➁の暴力は認定せず)、Dと会社に対して、約7260万円(逸失利益約4360万円+死亡慰謝料約2300万円+弁護士費用等)の支払いを命じた(連帯責任)。なお、E部長の不法行為責任は否定した。
- 判決の理由
- (Dについて)Dの言動は、「仕事上のミスに対する叱責の域を超えて」Vの「人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たる」。ただし、DがVに対して暴力を振るったことに沿う証拠はない(暴力は認定できない)。
- (E部長について)Vのメンテナンス業務が外注先での作業が大半を占めることからすると、DのVへの指導の実態についてE部長が把握するのは困難であり、VがE部長に対しDからパワハラを受けていることを訴えた事実も認められないことからすると、パワハラ放置の主張は認められない。また、E部長の役割は作業現場の人員配置と作業日程の決定にとどまっていたこと等に照らすと、長時間労働の放置の主張も認められない。
- (Dの不法行為とVの自殺との相当因果関係について)Vは、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、Dの言動(➀)から受ける心理的負荷は極めて強度であったといえ、Dの言動(➀)はVに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。そして、Vには、業務以外の心理的負担を伴う出来事は確認されていないし、既往症等においても問題はなく、性格的な偏りもなく、むしろ、手帳の記帳を見れば、きまじめな好青年であるといえる。したがって、Vは、自殺当時、Dの言動を起因とする中等症うつ病エピソードを発症していたと推定され、正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態になり、自殺に至ったといえ、Vの自殺とDの不法行為との間の相当因果関係が認めらえる(Vの自殺に関するDの損害賠償責任を認める)。
- 会社は使用者責任(民法715条)によりDと連帯して責任を負う。
- なお、判決は、Vの手帳について、「記述内容が客観的事実と符合していることが認めらえる」等として、手帳に記載されたDの言動を認定した。他方で、遺族が主張したDの暴行については、「DがVに対して暴行を振るったことに沿う証拠はない。」として認定しなかった。

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