パワハラ裁判例~うつ病の既往症で自殺の賠償額は3割~
パワハラ裁判例~うつ病の既往症で自殺の賠償額は3割~
パワハラ裁判例~うつ病の既往症で自殺の賠償額は3割~
- 判例のポイント
- 暴君型の指導担当者によるパワハラ(身体的な攻撃・精神的な攻撃)が一因となって、受け手が自殺した事案。
- 不法行為と自殺との相当因果関係を認め、自殺についての損害賠償を肯定したが、受け手にうつ病既往症があったことなどから、損害賠償額は損害額の3割とされた。
- 市職員の事案のため、国家賠償請求等訴訟となっている。
- 行為者(加害者): D(Vの指導担当者)
- 受け手(被害者): V(Sセンターの管理系業務主任の事務職)
- 背景
- Vは、自らの希望でSセンターに異動したが、異動前に、「うつ病、適応障害を発症し、重症うつ状態レベル」と診断され、89日間の病気休暇を取得していた。
- Dは、職場関係者により、自己主張が強く協調性に乏しい、言葉使いが乱暴でミスをした際には強く叱る、管理係に長く勤務している立場を利用して仕事を独占している、上司にも暴言を吐く、専任である軽量業務の内容に関し他者に引き継いだり教えたりするのを拒否する、同僚の中にはDから嫌がらせを受けた者もいる、SセンターのE管理係長もDに遠慮しているところがあったなどという認識および評価がなされており、職場関係者の中には、Dの行動および発言に苦労させられ、心療内科に通ったことがある者もいた。
- Sセンター所長のFは、Vが「うつ病、適応障害」の病名で89日間の病気休暇を取得していることについて引継ぎを受けておらず、E係長もVの病気休暇取得の事実を知らなかった。
- Dの言動
- Sセンターに異動したVはDとペアを組み、Dと2人で公用車に乗って、銀行への入金・両替業務を開始したが、Dは、Vに対し、指導係として職務について教示をする際、威圧感を感ずるほどの大きな声を出し、厳しい言動で注意をすることがあり、また、Vの脇腹に暴行を加え、およそ3ヵ月にわたり暴言等を継続的に行った。
- 使用者の対応等
- Vは上司のE係長にパワハラを訴えたが、E係長は事実確認をせず、かえって、職場における問題解決を拒否するかのような態度を示した。
- E係長から報告を受けたF所長も事実の確認について指示をせず、DとVがペアを組んでから3か月以上経過したころにようやく、Dが1人で入金・両替業務をする体制に変更した。
- F所長は、DとVがペアを組んでから8か月後に、Vから体調不良や自殺念慮を訴えられたが、自らあるいは部下に命じるなどして主治医等から意見を求めたり産業医等に相談するなどの対処をせずに、自己の判断で勤務の継続をさせた。
- このためVのうつ病が憎悪してVが自殺した。
- Vの遺族の訴え
- Vの両親が市に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
- 判決の概要
東京高裁は、市に対し、安全配慮義務違反による国家賠償法1条1項の損害賠償責任として、合計約1920万円等(VおよびVの両親らの精神的苦痛に対する慰謝料およびVの逸失利益等)の支払いを命じた。
- 判決の理由
- 使用者である市は、安全配慮義務のひとつである職場環境調整義務として、良好な職場環境を保持するため、職場におけるパワハラを防止する義務を負い、パワハラの訴えがあったときには、その事実関係を調査し、調査の結果に基づき、加害者に対する指導、配置換え等を含む人事管理上の適切な措置を講じるべき義務を負う。
- E係長やF所長はVからパワハラの訴えに適切に対処していないから、市には職場環境調整義務違反がある。
- F所長は、Vからの体調不良や自殺念慮の訴えに対し適切に対処せずVのうつ病の症状を憎悪させたのであるから、市にはこの点でも安全配慮義務違反がある。
- ただし、以下の2点をあげて、V側の敗因・過失の割合を合計7割として、過失相殺により損害賠償額を3割に減額した。
- Vがうつ病を憎悪させ自殺するに至ったことについては、Vのうつ病の既往症による脆弱性が重大な素因となっていた。
- Vの両親は、Vがうつ病で通院、服用し、Dからパワハラを受け、E係長・F所長が適切な対応をしなかったこと、VがDとペアを組んでから約4か月経過したころからVの不安定な状況や病状悪化等について認識していたから、主治医等と連携をとるなどして、Vのうつ病の症状が悪化しないように配慮する義務があった
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