パワハラ裁判例~自殺と不法行為の相当因果関係認めず~
パワハラ裁判例~自殺と不法行為の相当因果関係認めず~
パワハラ裁判例~自殺と不法行為の相当因果関係認めず~
- 判例のポイント
- 繰り返し不適切な行為をする従業員Vに対し、上司が我慢の「決壊点」を超えてパワハラ(精神的な攻撃)に及び、これが一因となって、受け手が自殺した事例。
- 上司の言動の一部について不法行為を構成するとして精神的苦痛に対する慰謝料等(110万円)を認めたが、不法行為と自殺との相当因果関係は認められないとして、自殺についての損害賠償までは認めなかった。
- 受け手側にも問題行動がみられた。
- 行為者(加害者): D店長
- 受け手(被害者): V(別の家電量販店で20年の勤務経験あるフルタイム非正規の女性。入社約3年。販売・レジ担当)
- 背景
- Vは、販売やレジ業務で、社内規定や取扱いに反する不適正・禁止されていた処理を繰り返した(A.値引き対象でない商品を値引き販売した、B.テレビのリサイクル料の不適切な処理をした、C.自ら顧客の修理品を回収して持ち込み、顧客の修理代金を立替払し、修理品を自ら顧客に配達しようとした、D.夫が勤務していた会社に商品を値引き販売することを繰り返し、販売先が転売していた(当該架電量販店は卸販売が禁止されていた))。
- D店長の行為
- A.B.Cの行為について、注意書3通を作成させた(注意書は、顛末書や始末書のような性質を有するものではない)。
- B.を注意したところ、「売ってるからいいやん」と述べたため、声を荒げて叱責した(店長自身が、「だから僕この前、ばちんとキレたんです。あんなキレ方、僕はしませんよ、今まで。」と述べたほどの態様)。
- Vに社内ルールを逸脱する不適切な行動が続いたため、被告会社本部からVを販売・レジ業務に関わらない業務に配置換えするようにとの指示があり、適当な配置換え先がなかったため、競合店舗の価格調査業務およびプライス票の作成業務に配置変更することとしてVに意向打診した。当該業務は、一人でほぼ毎日競合店舗に赴き全ての商品についての価格調査を5,6時間ほどかけて行う極めて特異で過重な内容の業務であったため、Vが強い忌避感を示し、「私をやめさせるためですか」と発言した。
- 3の配置変更に伴って店舗の従業員全体の担当業務の調整の必要が生じてシフト変更を行ったところ、Vの勤務シフトについて、Vの希望で土曜日が勤務日となっていたものから日曜日を休日とするシフトに変更した。
- Vの自殺
上記3,4に不満を抱くVと店長との話し合いの翌朝午前に、Vは同僚とのLINEグループに「辞めることにしました」とのメッセージを送信し、自宅で縊頚により自死した。
- 遺族による提訴
Vの夫とVの子が、D店長の一連のパワハラによりVが自死したとして、D店長と会社に対し、連帯して約3500万円等の損害賠償を請求して提訴した。
- 判決の概要
大津地裁は、3.(配置換え指示)のみ不法行為を構成するとして、D店長と会社に対して、連帯して110万円(Vの慰謝料100万円+弁護士費用10万円)の支払いを命じた(父と子が各55万円ずつ)。
- 判決の理由
- (パワハラと自死との相当因果関係)配置換え指示(3)と自死との間に条件関係(事実的な原因と結果の関係)は認められるが、退職を飛び越えていきなり自死に至ることは通常は想定できず予見可能性がないから、配置換え指示と自死との間の法的な「相当因果関係」までは認められない(自死について損害賠償責任は否定)。
- 会社は使用者責任(民法715条)によりD店長と連帯して責任を負う。
- (原告は会社の職場環境配慮義務違反も主張したが)店長等の管理職従業員に対してパワハラの防止についての研修を行っていること、パワハラに関する相談窓口を人事部と労働組合に設置した上でこれを周知するなど、パワハラ防止の啓蒙活動、注意喚起を行っていること、相談窓口が実質的に機能していたことなどから、会社がパワハラを防止するための施策を講じるとともに、パワハラ被害を救済するための従業員からの相談対応の体制も整えていたと認めるのが相当であり、職場環境配慮義務違反を認めることはできない。
3.(配置換え指示)は、業務の適正な範囲を超えた過重なものであって、強い精神的苦痛を与える業務に従事することを求める行為であるという意味で、不法行為に該当する。
1.(注意書の徴求)は、業務上の必要性および相当性が認められる行為であり、パワハラ(業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為)の一環であると評価することはできない。
2.(叱責)は、何度も不適切な処理を繰り返したVに十分な反省が見られず、「売ってるからいいやん」と反論されたため、一時的に感情を抑制できずにされた叱責にすぎず、叱責の内容自体が根拠のない不合理なものであったというわけでもないし、これ以外に大声での叱責が反復継続して繰り返し行われていたとか、他の従業員の面前で見せしめとして行われていたなど、業務の適正な範囲を超えた叱責があったわけではないから、パワハラの一環であったと評価することはできない。
4.(シフト変更)は、Vの配置換えに伴う店舗の従業員全体の担当業務の調整という業務上の必要性から行われたものであり、意に反するシフト変更を行ったことのみをもってパワハラの一環であったと評価することはできない。

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