パワハラ裁判例~懲戒解雇された行為者が提訴~
パワハラ裁判例~懲戒解雇された行為者が提訴~
パワハラ裁判例~懲戒解雇された行為者が提訴~
- 判例のポイント
- 部下に対するパワハラ(パワーハラスメント)その他の4つの非違行為が認められたため、懲戒解雇を受けたところ、行為者(加害者)が懲戒解雇を争って提訴した事案で、請求棄却した判例
- 閉鎖的な職場における精神的な攻撃の事例
- 被害を訴えたメールと被害者が受診した精神科医師の診療録がパワハラ(パワーハラスメント)の事実認定にとって重要な証拠となった
- 行為者(加害者): A課長
- 受け手(被害者): B課員
- A課長の非違行為
- Bは事務長の指示で、電算室で、S社の健診システムのテスト業務を行っていたが、システム障害が次々に起こり、1年近くたってもテスト業務が終了できなかった。Bと電算室で二人きりで業務を行うことが多かったAは、このような状況を見て、Bに対し、苛立った様子で、「1年近くやっているんだから、さっさと終わらせろ」などと言った。また、冗談交じりの言い方で、「S社の社員じゃないの。」とか「S社から給料をもらってるんじゃないの。」などと皮肉めいたことを言った。
- 出席資格がない新システム導入委員会に出席しようとし、事務長から「退出しないと業務命令違反になる」と退出を命じられたが従わずに「出席させる。」と居直り、委員会の開始が10分遅れた。
- 漏水の危惧に床に穴を開けて対応したいという要望が専門家の意見により受け入れられなかったところ、会社に無断で、電動ドリルで床に穴を開けた。
- 上司への連絡許可を怠り課員への連絡で済まして欠勤した(無断欠勤)。
結局、S社の健診システムは採用されず、違約金を支払って中途解約されたが、Aは、必要がないにもかかわらずS社に違約金を支払ったとして、事務長の対応を背任行為に当たるなどと非難していた。そのような中、AはBに対し、別の業者の担当者とBが連絡を取り合い背任の片棒を担いでいる等と罵るようになった。また、Bが、TJ社の新システムの導入に関して、事務長から命じられて各部署のヒアリングを行っていたことについて、「君はどういった権限でそのようなことをこそこそとやっているんだ。」「これ以上そのような行動をとるなら宣戦布告をするからな。」「今の状況ならB君はここにはいらない。」などと言った。このようなAの言動を苦痛に感じたBは、欠勤するに至り、事務長に対し、メールで状況を訴えた。
その後もAは、Bに対し、「パソコンの解像度が変わってる。B君が覗いているんだろう。」「インターネットの履歴を見て事務長に告げ口してるだろう。」「事務長の犬が。」などと罵った。更に、AがBに事前に日時を伝えて指示していた作業の現場にAが作業開始してもBが現れなかったことから、その後にあらわれたBに対し、「どこに行ってたんだ。」「どこから給料をもらってんだ。」「わざと(作業のときに)いなくなった。」「もういいから、しなくていい。」などと怒った。Bは早退してしまい、約2か月半にわたり欠勤した。Bはうつ病と診断され、都合8回、精神科に通院し、事務長に退職したい旨申し出て事務長が遺留することもあった。
- 事業主の対応
- 会社は、①~④などの事由をあげてAを懲戒解雇した。
- Aの提訴
- Aは、懲戒解雇無効と、残業代の未払賃金支払等で起訴提起した。
- 判決の概要
東京地裁は、懲戒解雇を有効とした(懲戒解雇無効に関する請求は棄却)。なお、時間外、深夜、休日の割増賃金請求約334万円は認めた。
- 判決の理由
- 4つの非違行為を認定して、①は、言動の内容自体からしても、先輩職員からの指導というレベルを逸脱し個人攻撃の域に達していることは明らかであるから、いわゆるパワハラ(パワーハラスメント)というべきものであると認められるから、いわゆるパワハラ(パワーハラスメント)というべきものであると認められるから、重大な非違行為といえる。
- ➂についても、それ自体重大な非違行為であり、➁➃についてはそれ自体では直ちに懲戒解雇に該当するとは言えないとしても、軽視することができない規律違反行為である。
- 以上を総合すると、上記各事実を懲戒事由とする本件懲戒解雇には合理的な理由があるというべきであるし、それが社会通念上相当性を欠くということもできない。
なお、Aは①の言動を否定しているが、東京地裁は、Bの事務長にあてたメールやBが通院していた医師の診察録などを証拠として採用し、認定した。Bのメールについては、「Bがあえて虚偽の事実を述べる動機もなく、その内容も迫真性に満ちたものであって、充分に信用することができる」とした。
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