2022/02/02
パワーハラスメント(パワハラ)防止措置
大企業は2020年6月、中小企業は2022年4月より義務化
大企業には既に2020年6月に職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止対策が義務づけられており、中小企業においてはパワーハラスメント(パワハラ)防止対策が2022年4月から義務づけられます。
職場でパワーハラスメント(パワハラ)を受けた人の割合が3割強、また都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が8万件を超える状況の中、「2019年の第198回通常国会において「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、これにより「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(「労働施策総合推進法」)が改正され、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止対策が事業主に義務付けられました。
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、経営上大きな損失につながる行為です。個人としての尊厳や人格を不当に傷つける等、決して許される行為ではなく、職場全体の生産性や意欲の低下、企業イメージの悪化等をまねく恐れがあります。パワーハラスメント(パワハラ)防止対策が企業の今後の存続を左右すると言っても過言ではありません。
■職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)とは
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)について事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、職場において行われる以下①~③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
① 優越的な関係を背景とした言動であって、
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)には該当しません。
■職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)について
①「優越的な関係を背景とした」言動とは
業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指します。
②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指します。
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者の関係性等)を総合的に考慮することが適当です。
その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要です。なお、労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)に当たり得ます。
③「就業環境が害される」とは
当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準とすることが適当です。なお、言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があり得ます。
■職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の6類型
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)の状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては以下の6つの類型があり、類型ごとに典型的にパワーハラスメント(パワハラ)に該当し、又はしないと考えられる例としては以下のようなものがあります。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
■パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐために事業主が雇用管理上講ずべき措置
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)を防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければなりません。
✔ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- パワーハラスメント(パワハラ)の内容
- パワーハラスメント(パワハラ)を行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
- パワーハラスメント(パワハラ)の行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
✔ 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。パワーハラスメント(パワハラ)が現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワーハラスメント(パワハラ)に該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。
✔ 職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)への事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
- 事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
- 再発防止に向けた措置を講ずること。
✔ 併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。
- 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
出典「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕」
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
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